2011 Fiscal Year Research-status Report
マルチプレックスデグロンによる複数タンパク質独立発現調節法の開発
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23651204
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
鐘巻 将人 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 准教授 (20444507)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タンパク質分解 / 植物ホルモン / 発現抑制 / 機能ゲノミクス / 細胞工学 |
Research Abstract |
H23年度はH22年度申請書に提案した植物ホルモン、ジャスモン酸イソロイシン(JA-ile)を利用した新規デグロン発現調節法の開発をおこなった。そのために、シロイヌナズナよりJA-ileリセプターと考えれるF-boxタンパク質COI1をクローニングして、COI1を発現する出芽酵母を作成した。また、よりCOI1がSCF複合体に取り込まれやすくするために、SCFのサブユニットSkp1を融合したSkp1-COI1を発現する株も作成した。分解標識としては、シロイヌナズナよりJAZ1, 2, 5, 10をクローニングし、GFPとの融合遺伝子として出芽酵母に導入した。またJAZ1, 2, 5, 10を細胞内の必須因子MCM4のC末端に導入し、Mcm4-JAZを発現する株も構築した。 GFP-JAZを発現マーカーとして、培地に2mMまでJA-ileを添加したが、有意なGFP-JAZの発現抑制は観察されなかった。また、Mcm4-JAZ発現株をプレート上で成育させる際に、寒天培地にJA-ileを添加したが、Mcm4-JAZ分解による成育阻害は起こらなかった。これらアッセイはオーキシンを用いた発現抑制法に対しては有効に機能したことを考えると、JA-ileシステムが機能しない根本的な理由を考える必要が出てきた。 植物内のJA-ileによる分解コントロールは比較的最近に明らかになった分解機構であり、現在提示されているモデルが必ずしも正しい訳でないかもしれない。そこで私たちは報告されている結合性が再現できるか、TIR1-IAA17(オーキシンシステム)とCOI1-JAZ1(JA-ileシステム)の結合を酵母two hybrid法で検証した。その結果、TIR1-IAA17の結合は見られたが、COI1-JAZ1の直接結合は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に提案した内容は全て実際に実験を行い、実際に検証することができた。オーキシンデグロンを検証した場合と異なり、提案したJA-ileデグロンは、現状では機能しないことが明らかになった。そのため、今後の研究推進方策で述べるように、研究内容の変更が必要である。 すでに完成しているオーキシンデグロンに関しては、実際に出芽酵母内で複製因子Mcm10の機能解析を行い、複製開始反応における新たな機能を明らかにした。この結果はCurrent Biology誌に発表を行った。このことから、我々の開発したオーキシンデグロン法が実際のタンパク質機能解析に有用であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
オーキシンシステムでは、出芽酵母内でIAA17を付加した標的タンパク質をオーキシン依存的に分解可能であったが、JA-ileシステムではJAZを付加したタンパク質の制御に成功していない。私たちの酵母two hybrid法ではCOI1とJAZ1の直接の結合が見られなかったことから、報告されているモデルとは異なり、実際のJAZ因子分解のためにはJAZ因子の修飾や他の因子などが必要なのかもしない。この点に関しは今後の植物生物学の進展を見つつ、JA-ileデグロンを確立する方策を模索する。 マルチプレックスデグロンを成功させるためのカギとなるJA-ileデグロン法が確立していないことから、本研究の方針を変更する必要がある。すでにオーキシンデグロン法は基本手法が確立しているが、まだまだ改良発展の余地がある。最近私たちは、出芽酵母を用いてデグロンであるIAA17タンパク質の中で分解に寄与する最小領域(9kD)を同定し、これを複数連結することで高効率型オーキシンデグロン系を作成することに成功した。このシステムはまだ培養細胞での実地検証が済んでいない。そこで、改良型オーキシンデグロン系を動物培養細胞で検証、システム評価を行い、場合によってはさらなる最適化をおこなう。また、TIR1-IAA17は酵母two-hybrid法で結合することが確認できたので、オーキシン依存的に結合を制御する結合ドメインの開発が可能になると考えられる。そこで、今後はこの可能性も検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分は実験を遂行するための試薬一般消耗品を購入費用として使用し、その他は研究関連の旅費、論文出版に際しての費用として使用する。
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