2011 Fiscal Year Research-status Report
代謝機能解析及び物質生産用宿主として利用可能な分裂酵母大規模遺伝子削除株の取得
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23651206
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹川 薫 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50197282)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / 大規模遺伝子削除 / 物質生産 / ミニマムゲノム |
Research Abstract |
本研究の目的は「大規模に遺伝子が削除され、遺伝子発現制御機構の解析や異種タンパク質生産などの様々な研究に適用可能な分裂酵母モデル実験株の創製」である。これまで申請者は出芽酵母の全必須遺伝子約1,100個と相同性の高い分裂酵母遺伝子を検索し、これらを分裂酵母の仮想必須として分裂酵母の染色体上に印をつけた仮想必須遺伝子染色体マップを作成した。また最近、分裂酵母の必須遺伝子に関する新たな報告(Nat. Biotechnol.28, 617-623, 2010)があり、我々の仮想必須遺伝子染色体マップの再検討を行った。その結果、各染色体で削除可能な領域が複数存在することがわかり、この領域の削除株を作製中である。また現在既に作製した第1および第2染色体の末端に近い部分を削除した株(約660kb削除株)について、様々な培地を用いて生育について調べた。その結果、細胞形態に若干の異常は認められ、生育速度もやや遅くはなるが大きな問題は生じていないことが明らかになった。そこで本株からさらに削除可能な領域について遺伝子削除を試みている段階である。一連の操作で得られた各種染色体大規模削除株を宿主として、モデルタンパク質を用いた物質生産評価を実施した。モデルタンパク質として、緑色蛍光タンパク質(EGFP)は細胞内におけるタンパク質合成効率、一方、ヒト成長ホルモン(hGH)とヒトトランスフェリン(hTF)にはN末端にシグナル配列を付加し、タンパク質合成効率に加えて分泌効率も評価した。合成培地(EMM)におけるEGFPタンパク質合成効率は削除サイズを増やすごとに高くなり、最終的に660kb削除株は野生株の約1.7倍生産量が高まることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、分裂酵母のゲノム配列を詳細に解析して、いくつかの大規模に遺伝子を削除可能な領域が特定でき、既にいくつかの領域が実際に削除可能であることを実験的に証明している。第一及び第二染色体両端を削除した4箇所の領域を削除した大規模削除株の作製に少し時間がかかったが、最終的に取得することができた。そこで今後はこれらの領域と既に削除できている領域をあわせることで、さらに大規模な分裂酵母遺伝子削除株の作製が可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで作製した分裂酵母大規模遺伝子削除株は第1および第2染色体末端の遺伝子領域を削除した株である。これらの株は染色体上の位置だけを考慮しており、どのような遺伝子がその部分にあるかについては、必須遺伝子かどうかのみが考慮されている。そこで今後はどのような遺伝子を削除するのか検討を行い、いくつかの削除株シリーズの作製を試みたい。例えば転写因子をさらに削った株、出来るだけグルコースが無駄なく消費可能な株など、物質生産に特化した株についてさらに検討を行なっていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はさらに分裂酵母の遺伝子削除を行うために、プライマー合成および塩基配列確認のためのシーケンス用試薬の購入を多く行う予定である。この理由については、今年度分裂酵母第一および第二染色体末端4箇所の遺伝子を削除した大規模遺伝子削除株の作製を試みていたが、3箇所から4箇所の遺伝子削除株を作製する際に、破壊株を何度試みても取得することができず、時間がかかってしまった。しかしこの問題は削除する順番を変更することにより解決して、最終的には4箇所削除株を取得することができた。このため、当初予定していたさらに新たな削除領域を除く作業が少し遅れたために、プライマー購入に予定していた経費を次年度に持ち越すことになった。このことが次年度のプライマー合成および塩基配列確認のためのシーケンス等の試薬代を予定している理由である。
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Research Products
(2 results)