2011 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質リガンドの精密局在化に基づいたシグナル伝達活性化剤の合理的設計
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23651214
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
築地 真也 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 特任准教授 (40359659)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / アゴニスト / 合成リガンド / 細胞内局在 / キナーゼ / 脂質 |
Research Abstract |
細胞内に内在する特定の蛋白質やシグナル伝達経路を活性化することのできる合成化合物「アゴニスト」は、生命現象の解析のための極めて強力な研究ツールとなる。しかしながら、アゴニストの開発はアンタゴニストの開発に比べると圧倒的に遅れている。本研究では、アゴニストの合理的創製を可能にする一つの戦略として「蛋白質リガンドの精密局在化」というコンセプトを提案する。そして本研究では、この概念に基づいて、細胞膜内膜上やオルガネラ膜上で選択的にPI3K/AktおよびRas/MAPK経路を活性化することのできる新規のシグナル伝達活性化剤を設計・開発することを目的とする。 本年度はまず、DHFRの阻害剤であるトリメトプリム(TMP)を蛋白質リガンドのモデル化合物として採用し、これを細胞膜内膜およびオルガネラ膜上に局在化させるための基本分子設計を確立することを目指した。種々の検討の結果、ミリスチン酸やファルネシル基を局在化モチーフとして利用することで、細胞膜内膜およびオルガネラ膜上に自発的に集積することのできる局在性TMPリガンドを創製することに成功した。また、これらの局在性TMPリガンドを培地に添加することで、細胞内に発現させたDHFR-GFP融合蛋白質を細胞質からそれぞれの膜上へと局在移行させられることを実証した。更に、DHFRにAktのキナーゼドメインを融合した場合、細胞膜内膜局在性TMPリガンドによってAktおよびその下流経路がコンディショナルに活性化されることを確認した。以上の結果は、局在性リガンドは新規の蛋白質トランスロケーション誘導剤となることを示しており、蛋白質リガンドの精密局在化によって内在性シグナル伝達経路の活性化を実現できる可能性が大きく開かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初予定していたPI3KおよびGrb2に対する合成リガンドの細胞内局在化までは実現できなかったが、モデルリガンドであるTMPを対象とした基礎的実験と応用が極めて順調に進行した。上記のように、TMPリガンドを細胞膜内膜およびオルガネラ膜上に精密局在化させる基本分子設計を確立することができ、これらの局在性リガンドによってその結合蛋白質の局在移行を誘導できることを実証した。また、局在性TMPリガンドとDHFR融合蛋白質の組み合わせによって特定の細胞内シグナル伝達計経路をコンディショナルに活性化できることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今回確立した合成リガンドの細胞膜内膜およびオルガネラ膜上への局在化モチーフをPI3KおよびGrb2に対するリガンドに適用する。これにより、PI3K/AktおよびRas/MAPK経路を特異的に活性化可能な新規アゴニスト化合物の合理的創製を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、当初予定していたよりも早くから生物学実験にシフトしたため、有機合成の試薬に充てていた消耗品費を次年度に繰り越すこととなった。次年度は、総研究費を用いて、局在性リガンド群の有機合成と細胞を用いたそれらの機能評価実験を推進する。特に、新規リガンド群の合成に必要となる試薬および溶媒、また、細胞生物学実験に必要となる培地・血清・抗体および各種の生化学実験用試薬といった消耗品の購入に研究費の大部分を充てる。更に、次年度は本研究成果を積極的に学会で発表していく予定であり、その旅費に研究費の一部を充てる。
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Research Products
(4 results)