2012 Fiscal Year Annual Research Report
タウタンパク質によるアミロイド繊維形成を支配するアミノ酸リン酸化コードの探求
Project/Area Number |
23651215
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森井 孝 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90222348)
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Keywords | アミロイド / タウタンパク質 / リン酸化 / ペプチド / 凝集体 |
Research Abstract |
アルツハイマー病患者の神経細胞内に蓄積するアミロイド凝集体の主成分は、過剰にリン酸化されたタウタンパク質である。しかし、リン酸化タウの『どのアミノ酸がリン酸化されることによってアミロイド凝集体形成が引き起こされるのか』は謎に包まれている。タウの凝集体形成に関与するアミノ酸配列の特定位置をリン酸化したペプチドおよび立体的な配置を制御したリン酸化ペプチドオリゴマーを系統的に合成し、それらの凝集特性を解析した。 タウ凝集体を形成するうえで重要なSVQIVYK配列のN末端(305位)セリンは生体内でリン酸化を受ける可能性が示唆される。305位セリンを含むペプチド、305位セリンと310位のチロシンをそれぞれリン酸化したSPHF誘導体ペプチド(pSPHF, SPHFpY)、そしてタウのスプライシング・バリアントに対応した305位にリシンが存在するKPHFおよびそのリン酸化体KPHFpYを合成した。また、同じく凝集体形成に重要なVQIINKKLDLSNVQSの生体内でリン酸化を受けることが示されているセリン残基をリン酸化したペプチド(CORE1S, CORE1pS)を合成した。 各ペプチドのアミロイド繊維形成特性を凝集体形成臨界濃度測定、構造を蛍光・赤外分光法、円二色性スペクトル、繊維の形状・サイズを電子顕微鏡(TEM)・原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。これらの結果をもとにして、pSPHF、SPHFpY、KPHFおよびKPHFpYの凝集特性と凝集体の形状を明らかにして、その結果をBiochemistry誌に発表した。 また、リン酸化されたSPHFおよびCORE誘導体ペプチドを組み合わせたペプチド二量体は、必ずしも高い凝集体形成能は示さなかった。これらの結果から、「凝集特性を決定する複数位置のリン酸化の組み合わせ「タウ・リン酸化コード」の存在が示唆された。
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