2012 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン合成酵素の新奇基質認識機構の解明による除草剤耐性植物の創出
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23651219
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷 俊治 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00127276)
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Keywords | グルタミン合成酵素 / 窒素同化 / 蛋白質工学 / 活性中心 |
Research Abstract |
植物の独立栄養機能の代謝過程の根幹に位置するグルタミン合成酵素(GS)は、アンモニアをATP依存的にグルタミン酸に付加してグルタミンに変換する。この反応は植物の生育に必須であり、本酵素の阻害剤であるフォスフィノスリシン(PTT)等は除草剤として広く使用されている。このGSの立体構造情報をもとに基質特異性や4次構造を変化させた改変体の研究を進めることにより阻害剤に対する感受性が鈍化した分子種の創出することを目指している。立体構造に基づいて活性中心近傍の改変を行い、水素結合等を介してPTTと相互作用する残基に着目した。これらを改変した分子は活性が大きく変化したが、His249の改変体の一つであるH249Qでは一定の活性を保持して、かつPTTに対して耐性が10倍程度増強したものが見出された。 GSの2リング構造のリング間の接触部位は触媒部位とは物理的に離れており、活性中心形成には直接的な関与は無いと思われたが、リング接触部位近傍に位置するPhe150、Gly241、Trp243の変異体では基質親和性が大きく低下した。活性中心への基質の出入り口付近とリング間結合部位に親和性を低下させる原因となる領域が存在することが判明した。これらの改変体の立体構造決定に成功した。GSの基質結合部位とリング接触部位の2重変異体の活性は、両者の活性不全の特性が相加的に増強されることも確認した。これらの成果は、GSの活性中心以外の部位で基質認識や阻害剤感受性を決めている構造要因があることを初めて見出したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基質特異性の改変した変異体が、基質結合部位とリングの接触部位について得られ、構造解析結果によると、2つのクラスの変異体は互いに独立した限定的な構造変化を受けていることが判明した。そして、阻害剤の作用についてはリング接触部位の変異体には大きな変化がないことから、活性中心への阻害剤のアクセスの仕方は、基質であるグルタミン酸と少なくとも一部は異なることが推察された。この成果は本酵素の基質認識機構に新知見を与えるものである。このような変異体酵素のin vivoでの働きについてはまだ研究が途中段階であり、この点においては仕事が残されている。 グルタミン合成酵素とともに植物での窒素同化に重要な機能を持つアスパラギン合成酵素については、植物体内の発現機構に関して新知見が得られ、論文発表も行われたので一定の評価ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
新奇基質特異性の獲得した改変グルタミン合成酵素の立体構造解析が完了したので、この成果を論文発表するための取りまとめの研究と論文執筆作業を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に、現在得られている知見の学会発表と論文発表を行い本研究を完結させる。研究費はこのために使用する。
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Research Products
(1 results)