2011 Fiscal Year Research-status Report
RNAが引き起こす細胞内イベントの細胞周期依存性の解析
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23651221
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大槻 高史 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80321735)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 核酸 / 発生・分化 / RNA / 細胞周期 |
Research Abstract |
光刺激によってRNAを細胞質へと導入する方法(光誘導RNA導入法)により、RNAの関わる細胞内イベントの細胞周期依存性を調べることを目的とし、以下の項目に取り組んだ。1)RNAiの細胞周期依存性の解析:光増感型キャリアを用いてRNAを細胞内のエンドソーム内に封入したのち、光でRNAを細胞質へと届ける方法を、光誘導RNA導入法と呼ぶ。ここでは光誘導RNA導入法を用いてRNAiの細胞周期依存性を調べた。EGFPを安定発現するCHO細胞株を用い、EGFP遺伝子の発現抑制を指標にRNAi効果を評価した。このとき細胞周期をS期やM期に同調させたのちに、RNAの細胞内導入を行い、RNAi効果をフローサイトメトリー法で解析した。結果としては、RNAi効果は細胞周期とある程度の相関を持つことが示唆された。しかしながら、RNA導入前に細胞周期の同調を行う方法を取ったため、RNA導入後に細胞周期の同調がある程度解除された可能性も否めない。 そのため、生細胞において特定細胞周期を可視化する方法により、その細胞周期において光でRNAを細胞質内導入する方法を取って、さらに確認を続けているところである。2)RNA切り離し型・キャリア/RNA複合体の創製:光増感型キャリア/RNA複合体において、shRNAの場合は細胞内で活性が表れるが、他のRNAの場合、TatU1A-PSが離れないためにRNAの機能が阻害されているケースも見られる。 その場合、光誘導RNA導入法で、RNA関連イベントと細胞周期の関連を調べることはできない。そのため、Mg2+非存在下で切れずに細胞内Mg2+濃度下で切れるリボザイムを含むキャリア/RNA複合体を設計・作製した。これについて、細胞外条件でRNAが切り離されず、細胞内条件でRNAが切り離されることをin vitroで確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、光誘導RNA導入法によるRNAiの細胞周期依存性の解析、および、RNA関連イベントと細胞周期の関連を調べる下地としてのRNA切り離し型・キャリア/RNA複合体の創製、を行った。RNAiの細胞周期依存性を示唆する結果も得られており、以上のことから、おおむね順調に研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行ってきた、RNAiの細胞周期依存性の解析を引き続き行い、あらかじめ細胞周期を同調させる方法と、RNAiの効果と細胞周期の相関をフローサイトメトリー法で観測する方法など、異なる手法による結果をもとに結論を固める。さらには、RNAによる細胞分化の誘導に取り組む。光誘導RNA導入法により細胞分化誘導を試み、RNA導入のタイミング(特に細胞周期との関連)を検討することで、最適な分化誘導条件を見つけることを目指す。 ここでは、shRNAまたはmiRNAの導入による筋芽細胞から筋細胞への分化を題材に研究を進める。 マウス筋芽細胞株 C2C12はTRB3遺伝子の発現抑制をすることにより筋細胞への分化促進が起こることが知られており、miRNA(miR-133b)の発現により筋細胞への分化マーカーが発現することも知られているため、anti-TRB3配列のshRNAやmiR-133bによる分化誘導が可能だと考えられる。 まず、細胞周期について検討する。加えて、光の当て方により細胞内に一度に大量のRNAを導入したり時間をかけてゆっくり導入したりすることで、細胞分化に与える影響を調べる。ここでRNA導入のタイミングの細胞分化に与える影響が明らかになれば、再生医療に役立つ様々な細胞分化誘導への適用に向けて展望が開ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究室を共にする教員2人がH23年度中およびH23年度末に他大学に異動することになり、それまで器具や備品も互いに共用していたが、異動に伴い共用できなくなるものも多数でてきた。そのため、H23年度の経費使用は極力抑え次年度使用予定額として707326円残した。この額についてはH24年度に生化学実験、遺伝子工学実験、細胞実験のための器具・備品(40万円相当の小型クリーンベンチを含む)の補充にあてる。当初H24年度に予定していた額については当初計画どおりの使用を考えている
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Research Products
(6 results)