2011 Fiscal Year Research-status Report
両親媒性液晶の集合機能を用いた固形がん細胞へのアポトーシスの誘導
Project/Area Number |
23651229
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉澤 篤 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (30322928)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 医薬品探索 / 液晶 / 分子認識 / 癌 / 超分子化学 |
Research Abstract |
固形がんの化学療法において、がん組織への抗がん剤の浸透が不十分なことが課題としてあげられている。本研究では液晶分子の分子間相互作用を用いて異種低分子量化合物からなる分子集合体を設計し、それらが固形がんである肺がん細胞と通常細胞である繊維芽細胞の増殖抑制に及ぼす効果およびその薬理活性の作用機序を調べる。構造-活性相関をもとに、低濃度(1マイクロM以下)の添加でがん細胞のみに選択的にアポトーシスを誘導する系を見つけることを目的とする。平成23年度は脂肪族ヒドロキシ基、クラウンエーテル、フェノールを持つ化合物について肺がん細胞A549のに対して抗腫瘍活性を調べた。薬理活性の評価は以下のように行った。A549肺がん細胞を10%ウシ胎児性血清を含むダルベッコ改変培地に懸濁し培養した後、種々の濃度に調整した評価材料を加え所定時間培養し、その後、細胞をトリプシンで取り除いて回収してフローサイトメータを用いて細胞数を計測した。得られた結果を以下に示す。1)末端ヒドロキシ基を持つベント型化合物を合成し、それが肺がん細胞に対して10マイクロMで抗腫瘍活性を発現した。構造ー活性相関を調べたところ、抗腫瘍活性が分子形状に依存することがわかった。2)クラウンエーテルをアミド結合で液晶形成基につなげた化合物を合成し、薬理活性を調べた。合成したクラウンエーテル誘導体は顕著な抗腫瘍活性を示した。一方、クラウンエーテルおよび液晶形成基のみではそのような効果はみられなかった。3)複素環を持つ種々のフェノール誘導体をスクリーニングした。その結果、ピリジン環またはピリミジン環を持つ3環フェノール化合物で大きな細胞増殖抑制効果が見られ、それがアポートーシスに起因することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラウンエーテル誘導体および複素環を持つフェーノール誘導体においてA549肺がん細胞に対して顕著な増殖抑制効果が見られた。増殖抑制はいずれも細胞死に起因することがわかったが、特にフェノール誘導体では10マイクロMでアポトーシスを誘導していた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)合成と評価:平成23年度に実施したスクリーニング結果に基づき新規化合物を設計・合成する。平成23年度と同様に得られた化合物および混合物の液晶性および分子間相互作用の評価、ならびに肺がん細胞A549と繊維芽細胞WI-38に対して、細胞増殖抑制効果を評価する。また、得られた異種化合物間の分子間相互作用の強弱が薬理活性に及ぼす効果について調べる。2)作用機序の検討:アポトーシス誘導と分子構造の相関について検討する。特に材料の細胞内での分布および動的挙動について情報を集め、分子設計への指針とする。3)モデル系の検討:細胞膜の透過性について有用な情報が得られない場合は、合成二分子膜を用いたモデル系を使い、液晶材料の膜への親和性および膜透過能について評価する。4)他のがん細胞への作用(予備的検討):肺がん細胞に対して所定の成果が得られた場合は他の固形がんに対する薬理活性を調べ、次の展開のための準備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度はスクリーニングを中心にしたので、薬理活性発現のメカニズムを明らかにするための評価は行わなかった。それにより当該研究費が生じた。平成24年度の研究費は以下の用途での使用を計画している。(1)新規化合物合成用の試薬およびガラス器具 (2)細胞増殖抑制効果の評価 (3)作用機序解明のための評価 (4)旅費(学会にて成果発表)(5)論文英文添削および投稿料 (6)謝金(実験補助)
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