2012 Fiscal Year Annual Research Report
両親媒性液晶の集合機能を用いた固形がん細胞へのアポトーシスの誘導
Project/Area Number |
23651229
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉澤 篤 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (30322928)
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Keywords | 抗腫瘍効果 / 液晶 / 肺がん / 細胞死 / アポトーシス |
Research Abstract |
固形がんの化学療法において、がん組織への抗がん剤の浸透が不十分なことが課題として挙げられている。本研究では細胞膜との相溶性が高いと推定される液晶性低分子量化合物を設計し、それらが固形がんである肺がん細胞の増殖抑制に及ぼす効果およびその薬理活性の作用機序を調べた。低濃度(1マイクロM以下)で腫瘍細胞に細胞死を誘導する化合物を得ることを目指した。 1. フェノール性複素環化合物:フェノール性ヒドロキシ基とアルキル基(またはアルコキシ基)を持つ含窒素3環化合物について肺がん細胞A549の増殖に及ぼす効果を調べた。ピリジン環またはピリミジン環を含む3環からなる複素環化合物が10マイクロMの添加で90%の細胞増殖抑制率を示した。いずれの化合物でもアポトーシスによる細胞死を誘導したが、含窒素芳香環の位置によってそのメカニズムが異なることが分かった。ピリミジン環からなる3環化合物について鎖長依存性を調べたこところ、メチレン数が4、5および6のものでは顕著な抑制効果(90%以上)を示したが、8以上になると効果は小さくなり、10では抑制率が20%だった。また、中央にピリミジン環を持つ化合物では正常細胞である繊維芽細胞の増殖も抑制したが、ピリジン環ではがん細胞の増殖のみを抑制した。 2. クラウンエーテル含有液晶性化合物:上記のピリミジン環を含む3環化合物にスペーサーを介してクラウンエーテルをつないだ化合物を合成し、その薬理活性を調べた。A549肺がん細胞に対する半数阻害濃度(IC50)を比較するとフェノール性化合物では6.0マイクロM、クラウンエーテル含有化合物では131nMとなった。また、いずれも細胞死を誘導したが、前者ではアポトーシスであったが、後者はネクローシスであった。クラウンエーテル含有化合物ではミトコンドリアのATP産生低下を介してネクローシス様細胞死が誘導されることが示唆された。
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