2011 Fiscal Year Research-status Report
生体内プロテアーゼ活性の複数同時観測を可能とする新規タンパク質プローブ分子の創成
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23651230
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂本 清志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30335228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プロテアーゼ / バイオプローブ / 分割型蛍光タンパク質 / 分割型インテイン / カスパーゼ / アポトーシス |
Research Abstract |
細胞内に存在する種々のプロテアーゼの活性、種類ならびにその経時的発現分布変化をタンパク質レベルで可視化し、モニタリングすることは、複雑に分化した各細胞機能を分子レベルで解析、理解する上で非常に重要かつ緊急性を有する研究課題と考えられる。以上の背景を踏まえ、本申請課題では、生細胞ならびに生体内に存在する様々なプロテアーゼ活性の複数同時リアルタイム観測を可能とする新規蛍光および発光タンパク質型プローブ分子を開発することを目的としている。平成23年度は、分割型蛍光タンパク質の自発的再構成反応を利用した新規タンパク質型プロテアーゼ活性インディケーターの構築を行った。具体的には、二分割したタンパク質フラグメントの一方もしくは両断片に対し、ターゲットとなるプロテアーゼ基質配列を付加後、環状化を行うことによって、検出対象となるプロテアーゼ存在下においてのみ蛍光を発する分割型GFP変異体の構築を達成した。また、環状化 GFP フラグメントの構築に際し、Synechocystis sp.由来の DnaB分割型インテインを利用することによって、環状化反応を効率的に行うと同時に、タンパク質型プローブを遺伝子エンコーディングした状態で生細胞内に導入することが可能となった。また、異なる分光学的特性を持つ分割型蛍光タンパク質変異体を組み合わせて使用することによって、複数のプロテアーゼ活性のマルチカラー同時検出に成功した。さらに、二分割したタンパク質フラグメントを異なる基質配列を用いて環化することで、二種類の異なるプロテアーゼが同時に存在した状態でのみシグナルを観測可能な Dual-Protease センシングシステムの開発にも成功した。以上の成果の一部は、Peptide Science 2011, 325-326 (2012) 等に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災による大腸菌細胞サンプルの破壊や、酵素等の試薬の劣化、測定、実験機器の破損等の被害を受け、計画の遅れが危惧されたが、実験計画上、困難が予測された点を迅速に進行させる事で、平成23年度に計画した実験は、おおむね順調に達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
分割型蛍光タンパク質を利用する第一世代プローブ分子は励起光を必要とするため、細胞への光損傷や生体組織による励起光吸収等の問題が予測される。従って、一細胞長時間観測や動物体内におけるプロテアーゼ活性検出への応用には困難を伴う可能性がある。この点をふまえ、分割型発光タンパク質を用いた第二世代タンパク質型プローブ分子の開発を行う。プローブ分子設計における基本的な方法論は分割型蛍光タンパク質プローブ構築における戦略と同様であるが、分割型ルシフェラーゼをタンパク質側の基体として用いる。分割型ルシフェラーゼの自発的再結合を促すために、デザインした coiled-coil 構造等の特異的ペプチド間相互作用モチーフを積極的に利用する。また、発光極大波長や基質特異性の異なるルシフェラーゼを活用することで、複数のプロテアーゼ活性の同時検出システムの構築を達成する。さらに、分割型蛍光タンパク質や発光タンパク質を用いて得られた知見を基に、今回提案する方法論を様々な分割型酵素や分割型転写因子に応用する。細胞膜透過性を示す市販の小分子蛍光基質と特異的酵素反応によるシグナル増幅を利用することで、プロテアーゼ活性アッセイシステムのさらなる高感度化が期待出来る。具体的な候補として、β-ガラクトシダーゼや β-ラクタマーゼ、リボヌクレアーゼ等、高次構造既知の比較的安定な分割型酵素やタンパク質を基体として採用する予定である。計画の遂行にあたっては、既存のデータベース情報と確立された分子生物学的手法によって、短期間での達成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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