2011 Fiscal Year Research-status Report
高機能性人工核酸を用いた自在なスプライシング制御技術の開発
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23651236
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小比賀 聡 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80243252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30432446)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高機能性人工核酸 / BNA / アンチセンス分子 / スプライシング制御 / エクソンスキップ / 筋ジストロフィー / 家族性高コレステロール血症 |
Research Abstract |
本研究課題では、高機能性人工核酸BNAアンチセンス分子を用いて、前駆体mRNAのスプライシングを制御する技術を開発する。今回は、BNAアンチセンス分子によるスプライシングへの影響を解析するための評価系の改良、および、新たな評価系の構築を行うと共に、その評価系を用いてBNAアンチセンス分子の機能評価を行った。我々は既に、蛍光の変化を指標として家族性高コレステロール血症の原因遺伝子LDLレセプター遺伝子のスプライシングの違いを検出できる評価系を構築している。今回この評価系の感度を上げることで、僅かな量のスプライシング変化を検出できるように改良した。具体的には、エクソン間のイントロンの領域を短くし、転写・翻訳の効率を上げることで、従来法よりも蛍光強度を増強させることに成功した。一方、他のスプライシング異常に起因する疾患への応用を目指し、新たに筋ジストロフィーの原因遺伝子ジストロフィン遺伝子に着目した評価系を構築した。まず、蛍光蛋白質DsRed(赤色)とEGFP(緑色)の遺伝子の5'側に、ジストロフィン遺伝子のエクソンを3個挿入したレポーター遺伝子を構築した。この際、上記得られた知見をもとに、蛍光強度が強くなるような工夫を施した。このレポーター遺伝子は、中央のエクソンのスキップの有無でコドンの読み枠がずれるように設計してあり、スプライシングの違いにより異なる蛍光色(赤色もしくは緑色)を発する。本レポーター遺伝子をFlp-In293細胞に導入することで、スプライシング評価系を構築した。次に、種々BNAアンチセンス分子を設計し、エクソンをスキップさせる機能の効果を検証した。その結果、5種類のBNAアンチセンス分子を混合して添加することにより、エクソンスキップが起こり、蛍光の変化が認められた。今後、これら分子の機能を精査することで、新たなアンチセンス医薬品への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、既に構築していた高コレステロール血症に有効なアンチセンス分子探索のためのスクリーニング系を改良することで、より高感度なスクリーニング系の構築に成功した。これにより、今後様々なBNAアンチセンス分子によるエクソンのスキップや回復の効率を細かく評価することが可能になり、本研究課題の目的を達成する上で大きな進歩である。さらに、別の疾患(筋ジストロフィー)を標的としたスクリーニング系の構築も行った。これら異なる評価系を用いることで、スプライシングを制御するための標的候補配列の決定を一般化することが可能になる。これらスクリーニング系を用いて、種々BNAアンチセンス分子を混合して用いることで、効率よくエクソンをスキップさせることに成功し、目的とするスプライシングの自在な制御の実現に向け前進した。また、これら分子をトランスフェクションするための条件や細胞株の検討を行い、内在性の遺伝子に対するスプライシングへの影響を確認するための準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、計画通り順調に研究が進んでおり、今後も研究計画調書にそって研究を進めていく。具体的には以下のとおりである。1. エクソンをスキップさせるBNAアンチセンス分子について、さらにその配列を精査し、効果的なBNAアンチセンス分子の開発を行う。これらBNAアンチセンス分子を用いて、実際に内在的に発現している遺伝子のスプライシングを制御できるか否かを検証する。2. エクソンがスキップするLDLレセプター遺伝子を標的とした評価系を用いて、スキップするエクソンを回復させるBNAアンチセンス分子を選別し、標的とする配列を同定する。さらに、エクソンの回復を高効率で行うために、スプライシング促進因子の結合配列(ESE)を繋いだBNAアンチセンス分子を開発すると共に、内在的に発現している遺伝子に対する効果も確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、人工核酸BNAおよびオリゴヌクレオチドの合成に必要な原料、試薬の消耗品代として使用する。また、これらオリゴヌクレオチド分子の機能を解析するうえで、細胞生物学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法を駆使したアッセイが必要なため、それらに関わる細胞培養用培地、血清やプラスチック器具、酵素、キット類の試薬の消耗品を購入する。さらに、得られた研究成果を学会で発表するための国内旅費、および、論文投稿料も必要とする。
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