2012 Fiscal Year Research-status Report
肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼの選択的阻害剤の探索
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23651241
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
牧野 泰士 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70332955)
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Keywords | グリコーゲンホスホリラーゼ / グリコーゲン分解 / 阻害剤 / 糖尿病 |
Research Abstract |
グリコーゲンホスホリラーゼに対して阻害剤が直接作用する部位としては、活性部位のほか、インドール結合部位、グリコーゲン貯蔵部位、AMP結合部位などが知られている。まず、前年度に調製したインドール誘導体について、グリコーゲンホスホリラーゼ活性阻害能の一次評価を行った。この一次評価は、前年度に調製したピリジルアミノ化マルトヘキサオースを基質として用い、グリコーゲン合成方向で行った。その結果、グリコーゲンホスホリラーゼ活性の阻害作用は確認できたものの、肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに対する選択的な阻害作用を示すものは存在しなかった。 そこで、インドール結合部位とは異なる部位に作用する化合物についても、阻害能の一次評価を開始した。今回注目したのは、グリコーゲン貯蔵部位に作用する化合物である。従来、環状オリゴ糖類はこの部位に作用することでグリコーゲンホスホリラーゼ活性への阻害作用を示すとされてきた。しかし、ピリジルアミノ化マルトヘキサオースを基質として阻害メカニズムを詳細に検討したところ、環状オリゴ糖類はグリコーゲン貯蔵部位に作用するものの、活性部位の働きに直接的な阻害作用を及ぼすわけではないことが明らかになった。 さらに、前年度に引き続いて、阻害能の二次評価に適したグリコーゲン分解方向での評価方法の検討も行った。その結果、陰イオン交換クロマトグラフィーと示差屈折率検出器を用いることでグルコース-1-リン酸を直接的に分離・定量する新たな手法を開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響で、平成23年度に研究の立ち上げ作業が遅れてしまった。また、インドール結合部位に作用する化合物とグリコーゲン貯蔵部位に作用する化合物について阻害能の一次評価を行っているものの、肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに対して選択的な阻害作用を示す化合物を見つけるには至っていない。このことから、達成度はやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、グリコーゲンホスホリラーゼ活性阻害能を評価すべき化合物の調製を行う。なお、インドール結合部位とは異なる部位に作用する化合物も評価の対象とする。そして、それらの化合物が示す阻害能の一次評価(予備試験)を行う。一次評価において肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼへの選択的な阻害作用が示唆される化合物が見つかれば、グリコーゲン分解方向で二次評価(本試験)を実施する。 肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに対して高い選択性を持った阻害剤を選び出すことができた場合、基質濃度と反応速度との関係を調べ、阻害形式を明らかにする。また、選び出した阻害剤が酵素タンパクのどの部位に作用するのかを明確にするため、酵素-阻害剤複合体の立体構造解析を試みる。そして、反応速度論的解析や立体構造解析などから得られた情報を基に、どのようなメカニズムで阻害が起こるのかを検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝臓型のグリコーゲンホスホリラーゼに対して選択的な阻害作用を示す化合物が見つかっておらず、立体構造解析などを実施できていないことから、繰越金が生じることとなった。また、機器の大きな故障が起こらなかったことも繰越金が生じた一因である。阻害剤の候補となる化合物の調製がやや遅れていることから、繰越金をこの点の改善のために使用したいと考えている。 また、平成25年度分の研究費は、阻害能評価に必要な薬品等の購入に主として使用する計画である。
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