2013 Fiscal Year Research-status Report
肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼの選択的阻害剤の探索
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23651241
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
牧野 泰士 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70332955)
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Keywords | グリコーゲンホスホリラーゼ / 阻害剤 |
Research Abstract |
前年度に開発したグルコース-1-リン酸を直接的に分離・定量する手法を用いて、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤の評価を行っていたところ、二つの発見があった。 一つ目は、グリコーゲンホスホリラーゼの働きにはイオン強度依存性があることである。このことは研究開始当初に予想しておらず、この原因を解明しなければ、電荷を有する化合物がもつ阻害能を正しく評価することができなかった。さまざまな実験を行った結果、この原因の解明には成功を収めることができた。 二つ目は、グリコーゲンの分子サイズがグリコーゲンホスホリラーゼの働きに影響することである。既知のグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤について阻害定数を確認していたところ、文献値と本研究での実測値との間に大きな差があり、原因を調べたところ、この発見につながった。グリコーゲンは天然物であり、同じ種に由来するグリコーゲンであっても、メーカーやロットによって化学構造に大きな違いがある。このため、均質なグリコーゲンをどのようにして安定的に入手するかで、たいへん苦労することになった。 グリコーゲンホスホリラーゼの働きにイオン強度依存性とグリコーゲンサイズ依存性があることが明らかとなり、過去の文献に記載されている阻害定数と本研究での実測値、さらには異なる文献間での阻害定数をいかに比較するかという問題にも直面することになったが、解決には至っていない。 また、グリコーゲンホスホリラーゼの活性を阻害する化合物は見つかっているものの、肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼを選択的に阻害する化合物に関しては、未だ発見には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響で、平成23年度に研究の立ち上げ作業が遅れてしまった。また、グリコーゲンホスホリラーゼの働きにイオン強度依存性やグリコーゲンサイズ依存性があることを予想していなかったこともあり、肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに対して選択的な阻害作用を示す化合物を見つけるには至っていない。目標がかなり高いということもあるが、達成度はやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、グリコーゲンホスホリラーゼの触媒部位に作用する阻害剤の探索を重点的に行う方針である。グリコーゲンホスホリラーゼは同一サブユニットからなる二量体であり、分子内に二ヶ所の触媒部位が存在する。マルトヘキサオース誘導体(Glc5-GlcPA)を標準基質として、“構造が少し異なる基質”に対する相対活性を調べ、肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに特徴のあるサブサイト(グルコース残基1つを認識する空間)を探索する。そして、そのサブサイトを標的とする阻害剤を選び出したいと考えている。 肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに対して高い選択性を持った阻害剤を選び出すことができた場合には、基質濃度と反応速度との関係を調べ、阻害形式を明らかにしたい。また、阻害剤が酵素タンパクのどの部位に作用するのかを明らかにするため、酵素-阻害剤複合体の立体構造解析を試みる。そして、反応速度論的解析や立体構造解析などから得られた情報を基に、どのようなメカニズムで阻害が起こるのかを検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝臓型のグリコーゲンホスホリラーゼに対して選択的な阻害作用を示す化合物が見つかっておらず、反応速度論的解析や立体構造解析などを実施できていないことから、繰越金が生じることとなった。また、機器の大きな故障が起こらなかったことも繰越金が生じた一因である。 未使用の研究費は、“構造が少し異なる基質”を調製するための試薬の購入や、酵素反応生成物を分離・定量するための装置であるクロマトグラフの整備に使用したい。また、研究成果を学術雑誌へ掲載するためにも使用したいと考えている。
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