2011 Fiscal Year Research-status Report
分子内回転の制御を基軸とするタンパク質オン/オフ蛍光プローブの開発
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23651242
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
青山 安宏 同志社大学, 理工学部, 教授 (00038093)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | BODIPY / 蛍光 / 酵素阻害剤 / 抗生物質 / 抗生物質耐性菌 / センシング / 炭酸脱水酵素 / カナマイシン |
Research Abstract |
フェニル置換BODIPYは分子内部回転により励起状態が熱失活し、弱蛍光性である。フェニル基を標的結合部位として利用し、標的との結合により立体障害を誘起できればし内部回転が阻害され、結果として強蛍光が誘起され(蛍光のオフ→オン制御)、これにより標的の蛍光センシングが可能になるのでないかと考えた。 具体的には、炭酸脱水酵素(CA)の阻害剤であるベンゼンスルホンアミドを置換したBODIPYプローブを合成した。これを用いると、期待どおり、CAが感度よく蛍光センシングできる。興味あることに、ベンゼンスルホンアミド基の置換位置がパラである場合とメタである場合、蛍光挙動が逆転することである。幾何異性体比(パラ/メタ)をとることにより、特異標的であるCAを、アルブミンのような非特異標的の妨害なく感度よく検出することに成功した。 さらに、本系を抗生物質耐性菌の蛍光センシングに応用することにも成功した。具体的には、カナマイシンあるいはアンピシリンのような抗生物質を置換したBODIPYプローブを合成した。このものをカナマイシン耐性菌あるいはアンイシリン耐性菌に作用させると、抗生物質/耐性菌特異的に、つまりカナマイシン耐性菌はカナマイシン-BODIPYにより、アンピシリン耐性菌はアンピシリン-BODIPYにより特異的に蛍光染色されることを見出した。それぞれの制耐性菌がもつ抗生物質修飾(分解)酵素がプローブを特異的に捕捉し、立体障害の付与→回転阻害→蛍光オンの一連の機作により新奇な抗生物質耐性菌の蛍光センシングが可能になったものと考えられる。 また、糖結合部位としてのフェニルボロン酸置換BODIPYプローブを合成し、これが糖の蛍光センシングに有効であることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
期待通り、あるいはそれ以上の成果が得られつつあると考えている。従来、このような蛍光のオン/オフ制御は例が無く、最初の例と見られることに加えて、予想外の成果があった。それは上述したが、幾何異性体比蛍光法の発見である。タンパク質であれ核酸であれ、非特異吸着に基づく選択性の低下(標的タンパク質/核酸以外のタンパク質/核酸との相互作用に基づくノイズの発生)は大きな問題である。ところが、非特異吸着は幾何異性体(パラ、メタ)に関わらず同様に起こるが、特異相互作用はパラ体では蛍光増強、メタ体では蛍光減少と、逆の効果を示し、その結果、パラ/メタの蛍光比をとることにより特異相互作用と非特異相互作用を明瞭に区別できることが明らかになった。この発見は特にin vivono生体センシング(生体イメージング)にとって大きな意義を有するものと思われる。 さらに、標的-プローブ相互作用を普通の酵素-酵素阻害剤の組み合わせから抗生物質耐性菌における抗生物質-修飾酵素のペアに拡張できた点も大きい。耐性菌の問題は医療面においても重大な課題であり、これに簡単な蛍光法でアプローチできる手法が見出された意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究展開には大きく2つの課題がある。一つは、本概念の一般化である。原理的に本法は種々の酵素-酵素阻害剤やリセプター-リガンド(抗原-抗体を含む)、小分子-核酸アプタマーに展開できるはずである。疾病に関わる標的の検出はとくに興味深い。できる限り多くの例で本法が応用できることを明らかにしてゆきたい。 もうひとつは蛍光オン/オフ制御の機構解明である。「立体障害の付与→回転阻害→蛍光オン化」は作業仮説であり、実証されたものではない。幾何異性体比蛍光法の確立には、パラ体プローブおよびメタ体プローブが標的タンパク質内でどのような構造(特にBODIPY骨格とフェニル基の二面角)をとるのか、X線結晶構造解析により明らかにする必要がある。また、抗生物質耐性菌の蛍光センシングにおいては、現象論的な蛍光強度の変化とともに、単話下抗生物質修飾酵素と抗生物質置換BODIPYとの相互作用そのものを明らかにしなければならないだろう。 上記2つの視点から検討を進め、本法のユニークさと応用範囲を明らかにしてゆきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な設備は完備している。研究費のほとんどはプローブ合成のための有機試薬および標的タンパク質・抗生物質耐性遺伝子などの生化学試薬の購入に供される。そのほか、成果発表のための若干の旅費が計上されている。
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