2011 Fiscal Year Research-status Report
ツシマヤマネコをモデルとした糞からの生物多様性情報の抽出と種保全への展開
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23651245
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80192748)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ツシマヤマネコ / 非侵襲的手法 / 遺伝情報 / 種判定 / 個体識別 / 性別判定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、絶滅危惧種ツシマヤマネコをモデルにして、野外から採集された動物糞に含まれるゲノムDNA を生物多様性情報の源としてとらえ、その遺伝情報を抽出・解読し、ツシマヤマネコなどの動物およびそれを取り巻く生物多様性を保全する研究へ展開することである。 本研究では、まず、ミトコンドリアDNAの遺伝子増幅(PCR)分析により、糞の落とし主の種判定を行い、DNAが残存している糞を選別することができた。野外で採集された糞の状況は、気温、天候、時間、土壌の環境、糞の内容物などの条件によって千差万別であり、個々に対応して分析して行く必要がある。また、サンプルは、エタノール固定で室温またはそれより低温で保管すると良好な成績が得られることが判明した。 さらに、ヤマネコと判定した糞について、PCRによる複数のマイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型分析を行ったところ、やはり、サンプルによって分析成功率の度合いが異なっていた。得られた遺伝子型の再現性を確認するために、各糞について2回から5回までの分析を行った結果、残存状況の良好な糞は2回の分析で十分であったが、5回の分析を行っても遺伝子型を決定できないサンプルもあった。また、性染色体上の遺伝子のPCR法による性別判定法を開発し、性別を決定することができた。一連の開発技術が、個体の分布域の推定にも有効であることが判明したが、サンプルによってはヘテロ接合体の結果に再現性が見られない場合があるので、同一遺伝子座の分析を2回以上行い、慎重な分析を行う必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糞DNAからの種判定、個体識別、性別判定等の手法を確立し、当初の目的に達している。まだ、個体識別マーカーが少ないため、それを増やして遺伝情報量を蓄積できるようにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高い再現性をもつ個体識別マーカーを増やす必要がある。さらに、内部寄生者や食物(被食種)の残骸などの遺伝情報を解析できる手法を開発して行く。そして、ツシマヤマネコなどの希少種を取り巻く環境ゲノム情報を蓄積し、種の保全に行かせる手法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度中に納品したが、支払が次年度以降になったため、DNA分析試薬1品の支払に使用する。
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Research Products
(3 results)