2012 Fiscal Year Annual Research Report
ツシマヤマネコをモデルとした糞からの生物多様性情報の抽出と種保全への展開
Project/Area Number |
23651245
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192748)
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Keywords | ツシマヤマネコ / 非侵襲的手法 / 遺伝情報 / 種判定 / 個体識別 / 性別判定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、絶滅危惧種ツシマヤマネコをモデルにして、野外から採集された動物糞に含まれるゲノムDNA を生物多様性情報の源としてとらえ、その遺伝情報を抽出・解読し、ツシマヤマネコなどの動物およびそれを取り巻く生物多様性を保全する研究へ展開することである。 ミトコンドリアDNAの遺伝子増幅(PCR)分析により、糞の落とし主の種判定を行った。その種判定が成功し(つまり、DNAがある程度残存している状態であること)、かつ、ヤマネコと判定した糞DNAについて、PCRによる複数のマイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型分析を行った。対馬において、昨年度に糞を採集した地点と同じ地域で本年度も糞を採集し、個体識別に基づき、行動圏の分析も試みた。サンプルによって分析成功率の割合が異なっていたため、得られる遺伝子型の再現性を確認するために、各糞について2回から6回までの分析を行った。さらに、性染色体上のDNAマーカーを用いた性別判定法も行った。以上の結果、2年間で同一個体由来と考えても矛盾のない糞も検出された。これらの技術を用いて慎重な分析を行うことにより、個体の分布域の推定にも有効であることが判明した。 対馬において、ツシマヤマネコと同所的に生息するツシマテンの非侵襲的手法を展開して行くために、組織サンプルを用いたマイクロサテライト分析を行い、マーカーDNAや分析手法の有効性を確認しながら、自然集団の遺伝的多様性および地理的変異を明らかにし、論文発表した。 一連の研究において得られた技術や分析条件を応用し、北海道のキツネ地域集団の糞を用いた非侵襲的解析を行った。その結果、個体識別、性別判定ならびに個体数推定を行うことが可能となり、その手法が保全遺伝学的研究に有効であることを実証した。 以上の成果については、現在、投稿論文としてまとめているところである。
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Research Products
(3 results)