2011 Fiscal Year Research-status Report
湖沼における外来性捕食者の匂いに対する学習を介した底生動物の捕食回避機構の研究
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23651246
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中里 亮治 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 准教授 (30292410)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 底生動物 / 外来魚 |
Research Abstract |
本研究は、湖沼や池の底泥に生息するユスリカ幼虫が、その捕食者である外来魚の匂いを学習した結果、捕食者の匂いのみで被食回避行動を示すかどうかを明らかにすること、さらにはその学習した幼虫を成虫まで飼育しその卵から生まれた幼虫が、外来魚の匂いに対する忌避反応を示すかを明らかにすることを目的としたものである。研究実施計画ではオオユスリカ幼虫およびウスイロユスリカ幼虫の2種を実験に用いる予定であったが、23年度はオオユスリカ幼虫についてのみ実験をした。 最初に外来魚および在来魚の匂いに暴露された場合、オオユスリカがどのような捕食反応を示すかを明らかにするための実験を行った。外来魚としてチャネルキャットフィッシュを、また在来魚としてモツゴおよびヌマチチブをそれぞれ霞ヶ浦より採取し、それらの魚を水槽で飼育してその飼育水のみを実験に用いた。霞ヶ浦よりオオユスリカ雌成虫を採取し、卵から4齢幼虫まで魚の匂いに暴露されていない状態で飼育した。これらのオオユスリカ幼虫をそれぞれの外来魚・在来魚の匂いが付いた飼育水に暴露したところ、興味深いことに在来魚であるモツゴおよびヌマチチブの匂いに対しては、泥の表面に体を出さない、捕食のリスクが高まる泥表面での滞在時間の短縮、滞在時間を短縮して頭を出す頻度を高くするなどの捕食回避反応を示した。その一方で、外来魚のチャネルキャットフィッシュの匂いに対しては一切の回避反応を示さなかった このことはオオユスリカが共存の歴史が長い在来魚の匂いに対してはすでに学習しており、その学習効果が子孫に遺伝した結果、このような反応を示したものと推測された。一方で共存の歴史が10年程度しかないチャネルキャットフィッシュの匂いに対しては、オオユスリカがまだ十分に学習できていないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響で研究に着手する時期がかなり遅くなり、ウスイロユスリカを使用した実験の一部を次年度に回すことになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
オオユスリカとウスイロユスリカを用い、これらのユスリカ幼虫は、外来魚であるチャネルキャットフィッシュの匂いを学習出来るようになるのか?また幼虫を成虫まで飼育して、その卵から生まれた幼虫が、外来魚の匂いに暴露された場合、忌避反応を示すかを確かめる飼育実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
50万円を研究費として計上しているが、その大部分はガラス器具などの飼育実験に関わる費用に当てる予定である。
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