2012 Fiscal Year Research-status Report
在地生業創成による社会的弱者層支援と資源・生態系保全の両立に向けた実践的地域支援
Project/Area Number |
23651253
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
田中 樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (10231408)
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Keywords | ベトナム / 在来生業 / 社会的弱者層 / 生業多様化 / 地域開発支援 / 生業と生態系保全の両立 / 生業の複合 / 在地生業の形成 |
Research Abstract |
本研究は、対象地域の在来資源や在来技術の活用による生業多様化を通じて、生計の向上を図り同時に生態環境の保全をねらうものである。特に、貧困地域であるベトナム中部をフィールドに、社会的弱者層(山岳少数民族、小規模農民、経済的貧困者など)により実施可能な技術論や生業の創成を目指す。 平成24年度の取り組みとその成果は、以下のとおりである。 1)在来ミニブタ飼養モデル:ホンチャ県ホンティエン・コミューンの協力農家とともに、在来ミニブタ(22頭)の生産圃場の運営を始めた。現地で入手可能な飼料と囲い込み放牧形態の飼養法の効果を確認しつつ、運営資金確保のための生産・販売と遺伝資源の保全の両立を果たしている。付近の住民、近隣農村および買い取り業者の関心が高い。2)ホロホロ鳥飼養モデル:ホンチャ県ホンティエン・コミューンの協力農家とアルーイ県ホンラム・コミューンのフエ農林大学山間部演習施設内で、現地の飼料とネット囲いを用いたホロホロ鳥の飼養を行なった。アフリカ原産の家禽で放し飼いを基本とするが、居住地や農地(菜園)が密に分布している状況や小規模農民の屋敷地では、このような集約的な飼養方が適している。鶏の致死率の高い疾病にり患せず、現地飼料を食し、食肉は比較的高値で取引される。有精卵の有償頒布による普及が始まった。3)小規模養蜂:広大なアカシア造林地が広がり、農薬散布をする果樹園がないベトナム中部は、養蜂の潜在的適地である。フエ市への販路形成とともに、小規模養蜂の技術適用と担い手育成を進めている。4)萌芽的な在地生業の創成:山野草(クレソン、シダ類など)の栽培化、草木染め、野生蜜蜂の粗放的養蜂、内水面養殖の改良可能性の検討を進めている。5)フエ大学名誉教授号:本研究のみの成果ではないが、平成25年4月にフエ大学名誉教授号を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究機関であるフエ農林大学の協力により、在来種を用いたミニブタ飼養、ホロホロ鳥飼養、養蜂など放牧性小家畜を組み込んだ複合的生業モデルの形成に関する実証試験は順調に進展している。得られた成果は、JICA草の根パートナー型技術協力事業「ベトナム中部・自然災害常襲地のコミュニティと災害弱者層への総合的支援(平成22年10月~平成25年9月)」に素早く取り込み、地域住民の暮らしに資することを意識した。応用実践(開発・実証と普及)に重きを置きつつも、関連投稿論文数4件、口頭発表(特別セミナー)1件を得たことから、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度(最終年度)は、開発・実証が進んでいる新規の在地生業(ミニブタ飼養、ホロホロ鳥飼養、養蜂)を地域住民に普及する仕組みを整える他、現地の教育研究機関、行政府および援助団体への技術情報の提供を進める。萌芽的な在地生業および技術要素(クレソンやシダ類など山野草の栽培化、草木染め、内水面養殖の改良、木酢液の製造と養豚における成長ホルモン・抗生物質の多投の抑制、野生蜜蜂の粗放的養蜂)に関する実証的調査を進め、適宜、従来の生業システムへの織り込みを試みる。 挑戦的萌芽研究における一連の成果や経験を、他機関による援助案件や他研究者との共同研究(新規提案を含む)、研究代表者による別研究(基盤A)に積極的にフィードバックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)