2012 Fiscal Year Research-status Report
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23652001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
篠澤 和久 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20211956)
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Keywords | 脳神経科学 / 論理 / 時間 / 行為 / 責任 |
Research Abstract |
今年度の主要な成果は、二つである。 ひとつは、東日本大震災後の研究会等で討議してきた成果である。すなわち、行為の基本構造として解明されるべき感情・判断力・意思決定について、防災・減災の観点から再考を試みたものである。津波の避難行動などに関する調査の分析によって、感情・判断力・意思決定が「行為の構造」および「責任」とどのように連関するのかを再確認できた。今後、この成果を具体化していくためには、コミュニティとそこでの共同討議を通じて、一人ひとりの行動への意識を高めていくことが基本となる。今年度の成果は、主として、高校生・大学生を対象とした『災害に向き合う』(共著)として出版されたが、次年度は、この成果を踏まえた研究を展開したい。 もうひとつの成果は、アリストテレスの『分析論前書』についての文献学的考察である。これは、従来やや否定的に解釈されてきた『前書』(形式的論理体系)と『後書』(論証科学)との関係について、アリストテレスの様相論理体系を整合的に解釈する視点がやはり『後書』の論証科学へのルートになることを試論的に析出したものである。現在の研究状況としては、述語論理の記法を援用することによってアリストテレスの様相論理体系についての整合的に解釈を展開する立場とこの方法を採らない立場とに大別されるが、本研究では、そうした方法論的立場を組み入れる以前に『前書』が志向する構文論的視点の再構築が必要であることを論じた。これによって、論理体系と科学理論との連関に新たな視点から証明を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、東日本大震災の影響で本科研費の研究課題は大幅に遅れたが、今年度の研究成果によって当初の目的を達成するための足場は築くことができたと考える。最終年度では、震災での遅れを取り戻したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災という極限的事象を通じて再確認された人間的行為の基本構造と、アリストテレスの論理体系の分析から取り出させた科学的理論の基本構造とを踏まえて、最終年度では、それに脳科学の知見を重ね合わせながら、本科研費の課題である「脳・時間・責任」に迫りたい。とりわけ、認知科学的視点からの感情のあり方と行為の意思決定との関係をめぐる問題は、アリストテレスの実践的推論にも通底するものであり、そこから、時間と責任という地平への視野も開けてくると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に、当初の計画に準拠して、物品費と旅費が主たる執行項目となる。
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