2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652009
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 研 立教大学, 文学部, 教授 (00187238)
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Keywords | 坐禅 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、欧米で禅を指導したことのある、あるいは現に指導している人物の書物を調査し、そこに現れている観察を収集した。鈴木俊隆、弟子丸泰仙、嶋野榮道、中川正壽などの書物は、宗派などの差もあるが、大変示唆に富んでいた。また、現に禅を欧州などで指導している、幾人かの重要な人物に会い、インタヴューすることができた。またこれまで、研究問題について当事者に尋ねるインタヴュー用紙をEメールで数十通送ったが、残念ながら、回収率はあまり高くない(1~2割程度)。この活動は更に2013年度も続ける必要がある。 小総括すれば、西洋で禅を教えている当該者が日本人であれ、日本を知る西洋人であれ、確かに元来禅が持っている普遍性には各自がそれぞれの仕方で確信している。他方、現在の日本の禅が有している文化固有性の伝達の可否に関しては、課題が多い。別の言い方をすれば、各派各人の禅のスタイルと内実の「欧米化」をどのようにして、どこまで確立するかは、まだ鮮明な線が出ていない。欧米では圧倒的多数の人々が「在家」で、多くが非仏教徒だという事態の扱いも容易ではない。つまり、各自、日本とは異なる文化的宗教的伝統と環境の中で、どのようにして禅の内実を伝えるか、いまだに模索している印象を受ける。しかしそうは言っても、坐禅をしたいという一般人の数は西洋の至る所で減少することが全くなく、この点では日本での想像をはるかに超えている事態が進行している。 そうした観察の中間報告として、2012年度は「禅はヨーロッパでどう変わったか」という報告論文を著し、久保田浩(編)『文化接触の創造力』リトン社、2013年刊、に載せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
時間と労力の制限から、残念ながら、申請者の考察はヨーロッパを中心にせざるを得なくなっている。もっとも、できるだけ北米の事情の情報収集も続けていくつもりではある。 また、アンケートに応じてくれる当該者が予想した程多くはなく、2013年度も送付を続けなければならない。また、どうしてもインタヴューを試みたい人物や寺に接触を数回しても何らの返答もないケースが多々あり、予想通り進まない部分もある。
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Strategy for Future Research Activity |
書物を通しての事情研究は、ほぼ終止してもよいと思われる。 むしろ、アンケートの回収を更に試み、また、時間と費用がかかるが、当事者にインタヴューする試みを継続する。 年度の後半には、それまで集まった情報を分析し、総合する作業を開始する。それには、①アンケートの集積と分析、その結果の発表(HP上);②上記の「禅はヨーロッパでどう変わったか」という報告論文に何を加え、何を変更すべきかという観点から、同論文の改訂を行う;③上記の②の論文および関連論文を有機的に合わせ、『禅キリスト教の展開』(仮題、ぷねうま舎)として刊行する準備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費 370000円 物品費 101460円( 謝金 30000円(前年度は科研費から払う余裕がなく、個人研究費から充当) その他 30000円 なお、次年度使用額(31460円)が発生したのは、予定していた小型タブレット(インタヴューの際に使用する)が、望んでいた仕様のものがまだ発売にならなかったので、購入計画を次年度に送ったため。
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