2013 Fiscal Year Annual Research Report
信用危機と革命―ジャック・ネッケルと十八世紀末フランスの政治・経済論の動揺
Project/Area Number |
23652013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
王寺 賢太 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90402809)
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / フランス啓蒙 / ディドロ / レナル / ネッケル / アメリカ独立戦争 / フランス革命 |
Research Abstract |
研究最終第三年度の研究は、ジャック・ネッケルが最初に財務総長官を担当した1770年代から1780年代のフランスの哲学者たち、なかでもネッケルの近傍でフランス政治に言論で果敢に介入したレナルの『両インド史』と、その協力者ディドロの政治的著作に焦点を当てた。とくにディドロについては、本研究の海外研究協力者であり、学術振興会招聘外国人学者として2013年9月に来日したピサ大学教授ジャンルイジ・ゴッジによる東京・名古屋・京都での連続講演会「『百科全書』から政治的雄弁へ」の組織や、『思想』2013年12月号「ディドロ生誕300年」の編集・寄稿、パリ西大学で行なわれた「今日におけるディドロと政治」シンポジウム(2013年11月7日・8日)での研究発表を行なった。 その成果としては、特に1770年代のディドロの政治的著作を中心に、「一般意志」概念の用法を辿った研究がある。ディドロは君主の恣意的な権力行使を許す「専制」を与件として、隷属状態に置かれた人民の反専制的な意志・行動に「一般意志」を認める。その際ディドロは、ホッブズからルソーまでの主権論的な枠組みを離れ、むしろ反専制の思想家モンテスキューに近接する。「一般意志」の構成、人民の政治的主体としての構成は、「契約」によるのではなく、「世論」「公論」を通じて歴史的・漸進的に形成されるものとされるのだ。ディドロにおいて、啓蒙から革命への展望は、この漸進的な改革のヴィジョンの行き詰まりと、「有徳な」アメリカと「腐敗した」ヨーロッパの対比を踏まえ、未来における人民の「再生」に希望を託すというかたちで現れる。 なお、研究代表者は、これまでの『両インド史』研究の成果に基づき、2013年11月、スイスのCentre international d'Etude du 18e siecleから刊行中の『両インド史』批評校訂版編集委員に任命された。
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Research Products
(9 results)