2012 Fiscal Year Research-status Report
美術家インタビューのデジタル・アーカイブ化による戦後日本美術史の方法論的刷新
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23652021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
OSAWA Kei 東京大学, 総合研究博物館, 研究員 (80571231)
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Keywords | インタビュー / デジタル・アーカイブ / 戦後日本美術 |
Research Abstract |
昨年度の資料調査及びインタビュー用スクリプト作成に基づき、約15人の芸術家を訪問し、インタビューの準備を進めてきた。資料調査の結果、戦後日本美術を代表する多くの運動がいかに他の運動と交流し、共同に作品制作を進めてきたかが判明した。この点を考慮し、今後のインタビューにおいて、個別の芸術家の取材を行うのと同時に、それらの交流についてより詳しく尋ねることの重要性が明らかになった。インタビューするそれぞれの芸術家から当時の交流について証言を求めることによって、戦後の「前衛文化」を全体的に、そして多角的に記述することが可能になる。 しかし、スクリプト作成やインタビューの様式について新しい知見を得た一方、インタビューの実践をなかなか計画通りに行えない、という難点に直面した。それは主に二つの原因によるものである。一方では、インタビューとアトリエ訪問を兼ねて全てを録画すつ調査形態に対して抵抗を示す芸術家がいた。もうひとつの理由として、画像資料の扱いが複雑であり、文字資料以上に処理や編集に時間がかかるからである。この問題を配慮し、次年度はインタビューを優先的に行い、場合によってはアトリエ訪問と切り分け、芸術家の証言を数多く集める必要があることを学んだ。 方法論の面では、デジタル・アーカイブの構築に関して、慶應義塾大学アートセンターのアーカイブ担当と会議を重ね、本プロジェクトで手掛けている小規模のデジタル・アーカイブの構築方法や拡大手段に関して論じた。その結論を具体的にアーカイブに活かして行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績概要で述べた通り、準備調査やインタビュー用スクリプト作成は順調に進んだが、その反面、実際のインタビューが計画通りに行われていない。個々のインタビューにおいて、準備調査を行い、スクリプトを作成し、インタビューを行う、という計画を当初立てていたが、結果的に、全体調査を徹底的に行い、複数のインタビュー用スクリプトを同時並行で進めて来た。そのため、進行中のインタビュー企画が多い分、編集まで済んでいるものが十分足りていない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度であることを考慮し、今まで進めてきた企画をもとにインタビューを徹底的に行う。2013年12月末まで、少なくとも20のインタビュー(すなわち、平均すると2ヶ月に5つのインタビュー)を行う。2014年に入ってからは、インタビューの編集を進め、3月に東京大学総合研究博物館のウェブサイトにアップロードする予定である。 それと同時に2014年3月中旬を目処に、ベデオ録画を中心とする戦後日本美術のデジタル・アーカイブについてシンポジウムを企画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度はインタビューを企画通りに行えなかったため、その実現に向けて次年度の研究費を集中的に充てたい。したがって、次年度の研究費はインタビューを実施するための旅費及び人件費に充てる計画である。その中で、撮影の他、特に画像編集に技術補佐員のサポートが必要とされる可能性が高い。その場合は、カメラマンの人件費の他、画像編集用の人件費も発生するが、その分は昨年度の人件費の残高で十分負担できる。 また、インタビューを東京大学総合研究博物館のウェブページにアップロードする際にサーバー購入が必要である可能性がある。その場合、次年度の分品購入予算をサーバー購入に充てることにする。
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