2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652026
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Research Institution | Nagasaki Junshin Catholic University |
Principal Investigator |
浅野 ひとみ 長崎純心大学, 人文学部, 准教授 (20331035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児嶋 由枝 上智大学, 文学部, 准教授 (70349017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | キリシタン / スペイン / イタリア / 十五玄義 / 雪のサンタ・マリア / メダル / 鉛同位体分析 / クレメンス8世 |
Research Abstract |
当該研究は、日本全国のキリシタン遺物を学際的に調査研究し、キリシタン時代の信仰具の受容と展開を探ることを目的とする。 平成23年度は、6月に2回、満福寺所蔵群馬県立歴史博物館寄託重文≪泰西王侯図≫および≪武人図≫の顔料・支持体の調査を蛍光エックス線分析装置を用いて行い、高精細写真撮影、模写を通して同時代他作例と比較した。7月に、茨木市中谷家所蔵≪聖母子像≫(金属板油彩)、同東家蔵≪聖女立像≫の顔料分析、高精細写真撮影を行った。この結果、児嶋は、茨木市の磔刑像がジャンボローニャ系列の作例であることを指摘し(『上智史学』)、武田・浅野は、≪聖母子像≫、および≪聖女立像≫について技法の特徴、図像解釈を24年度文化財保護学会で発表する。中谷家所蔵の≪ロレートの聖母≫プラケットに関しては、前年までの研究成果を浅野・武田が『純心人文研究』18号に英文で発表した。8月には、日本二十六聖人記念館(長崎)寄託≪雪のサンタマリア像≫を対象として、浅野・武田・高林が顔料分析、撮影、状態・技法調査を行った。成果は『純心科研論文集』1号に英文で発表した。さらに、11月、新発見の堺市個人旧蔵(現国立歴史民俗博物館へ委譲)≪ガラス乾板≫100点を対象として、撮影および画題解釈を行い、全図版入りのカタログを作成した(『純心科研論文集』1号)。12月、キリシタン文化研究会で、浅野が中谷家蔵≪1600年銘クレメンス8世メダル≫について、制作年が下がリ得ることを指摘、武田は≪聖母マリア十五玄義図≫の顔料・支持体・技法の面から分析する詳細な報告を行った。 『純心科研論文集』には、前年までの研究成果である、浅野・平尾・後藤・魯がまとめたカタルーニャ美術館所蔵メダルの類型、鉛同位体分析に関する論考も英文で発表、児嶋はスペインとイタリアで招待講演を行い、海外で成果を問うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内の作例は大半が個人像であり、先方の都合に合わせて調査許可を得なければならない。また、群馬歴博のように、対象が重要文化財である場合も調査の実現には時間がかかる。それに加えて、昨年度は、震災による節電で、調査対照は群馬の他は関西と九州に限られた。また、補助金が全額支給されるか不明だったことから、海外調査は控え、国内を優先させることとなった。しかしながら、11月に新発見資料の報告があり、新聞に掲載されてすぐに調査を行った結果、第二次世界大戦時に焼失した浦上天主堂(長崎)所蔵の≪聖母マリア十五玄義図≫の一部を細部まで知ることができて、大きな収穫となった。調査としては全国、準備の整った所からランダムに進めているが、茨木のキリシタン遺物は茨木市立文化財資料館の全面的協力を得て、24年度の金属製品の蛍光エックス線分析を行うことにより、ほぼ完了し、最終年度にはカタログを作ることができるだろう。また、法人側が間接費の半分を『科研論文集』の発刊に充てることを許諾したために、初年度にもかかわらず、カラー図版を使ってA4版200ページ超の書籍(ISBNを付して世界主要図書館に頒布)を上梓することができた。そのような意味で、当初の計画以上に進展しているとみなす。
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Strategy for Future Research Activity |
マカオの聖ポール教会の≪大天使ミカエル像≫の調査許可が得られる見込みは薄いが、引き続き、関係各所に打診していきたい。また、アユタヤやゴアなどイエズス会と関連の強い土地に残るキリスト教信仰具を日本の遺物と比較考察するために調査に赴きたい。アユタヤは洪水の被害が報じられているために、混乱を避け安全に効率よく調査するために博物館側と綿密に連絡を取る必要があるだろう。海外も国内同様、連絡がつき、スムーズに準備ができるところから調査を開始する。現段階では、アイルランドのウルスター博物館所蔵の十字架やメダル等の信仰具調査を最終年度までに行うことを目標としたい。 最終年度には、茨木市のキリシタン遺物のカタログを作ることができるだろう。それに加えて、今年度、新たに「キリシタン信仰具データ・ベース」作成のための科研費(研究成果公開促進費)を取得したため、将来的には文献と実作例を視覚資料によって対照させるサイトを作りたい。それによって、従来誤訳が多く、議論がかみあわなかった信仰具関連の諸分野に大きく貢献することであろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
6月に浅野、武田が文化財保存学会で、≪雪のサンタマリア≫、≪個人蔵磔刑像≫、≪個人蔵聖女立像≫について口頭とポスターによる発表を行う。7月に浅野、平尾、後藤、魯によって、小倉で出土したメダルの鉛同位体分析のためのサンプリングを行う。その後、同じメンバーで茨木市に行き、千提寺、音羽のキリシタン遺物のうち、メダル7点、磔刑像、聖餅受け、厨子の蝶番、磔刑像のキリストの手の釘など金属製のものを対象に蛍光エックス線分析を行う。それらの資料は、すべて個人蔵なので、茨木市立文化財資料館にご協力いただき、一室に集めて、調査する。セッティングと予備日を入れて2泊3日で行う。夏は23年度に行った光学調査に基づいて、群馬県立歴史博物館の≪泰西王侯図≫、≪武人図≫に関する美術史的調査をヨーロッパで浅野が行う。 一方、それら、セミナリオ系の絵画が満福寺に伝世した理由を宗教学プロパーの内藤が現地に赴いて資料を集め考察する。成果は、おのおのの所属する学会で発表する。児嶋は九州での≪雪のサンタマリア≫などの調査を予定している。
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Research Products
(10 results)