2011 Fiscal Year Research-status Report
訪日外国人旅行者の日本国内文化施設における芸術消費に関する調査研究
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23652032
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
安藤 美奈 東京芸術大学, 美術学部, 助手 (70532498)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アートマネジメント / 文化施設 / 博物館・美術館 / 訪日外国人旅行者 / 芸術消費 / 消費者行動 / インバウンド / 観光 |
Research Abstract |
本研究では、訪日外国人旅行者の国内文化施設の利用動機、利用意向、利用経験などの芸術消費の実態調査を行い、調査結果から訪日外国人旅行者の芸術消費に関する仮説を構築、国内文化施設の現状との比較検討を通して、観光要素として求められる要件を抽出し、コンセプトとして取りまとめていくことを目的としている。研究の初年度である平成23年度は、訪日外国人旅行者に関する各種調査を中心に研究を計画していたが、3月に発生した東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故という、研究にあたって大きな影響要因が生じた。このため、現実に即しながら最大限の成果が得られるよう、調査の実施には適宜検討および変更を加えながら、研究を推進した。まずデスク・リサーチによる基本情報の収集を行い、アジア圏に限定して、調査対象となる訪日外国人旅行者の出身国(出発国)を選定した。選定にあたっては、訪日旅行者数の現状および将来的な可能性、漢字文化圏と非漢字文化圏、対象国の博物館・美術館などの文化施設数、オンライン調査、ヒヤリング調査の実施可能性などの様々な点から検討し、総合的に判断した。10月にタイで発生した大規模洪水災害のため、タイで予定した調査を見送ることになったが、最終的に中国での訪日旅行に関するオンライン調査、旅行業者および訪日旅行経験者へのヒヤリング調査、ベトナムでの旅行業者へのヒヤリング調査を実施した。これらの調査から、旅行業者の視点に立った日本国内の文化施設の魅力と問題点、そして訪日外国人旅行者の日本国内の文化施設における芸術消費の実態を把握することができた。このように、訪日外国人旅行者の日本国内の文化施設の利用状況だけでなく、その心理的な価値などが明らかになり、消費傾向の情報を得ることが可能となる点で、アートマネジメントの分野だけでなく、観光分野においても本研究は重要性が高く、意義のある成果であると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災などの訪日旅行者への影響、タイの洪水被害など研究計画への影響要因が発生したが、調査等の現実的な観点から実施の可能性を検討することで、研究計画を遅滞なく実施することに努め、研究を推進できた。このように予測不可能な要因のため調査仕様に多少の修正変更が生じたが、結果的にはより深く集中した調査となり、平成23年度に達成すべき成果を得られたと考える。平成23年度に実施した調査は、中国での訪日旅行に関するオンライン調査、旅行業者および訪日旅行経験者へのヒヤリング調査、ベトナムでの旅行業者へのヒヤリング調査である。これらの調査結果から、旅行業者の視点に立った日本国内の文化施設の魅力と問題点、そして訪日外国人旅行者の日本国内の文化施設における芸術消費の実態を把握することができた。また、入手可能な範囲でアジア圏における日本の文化施設などを紹介するガイドブック、訪日旅行パンフレットなどの参考資料を収集、今後の研究において検証材料となるよう内容を検討した。以上のように次年度に向けて研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行った各調査結果を踏まえ、日本国内の文化施設へのヒヤリング調査を実施し、研究全体の成果の取りまとめを行う。日本国内の文化施設へのヒヤリング調査は、訪日外国人旅行客が比較的多く訪れる国内の文化施設を直接訪問し、実態を観察することとする。調査対象施設としては、東京国立博物館(東京都)、ポーラ美術館(神奈川県)、地中美術館(香川県)、金沢21世紀美術館(石川県)などが候補に挙げられるが、平成23年度の調査から把握された博物館・美術館も含めた中から選定する。また選定した対象施設の担当者へのヒヤリング調査とともに、インバウンドを中心として観光産業関係者へのヒヤリング調査も計画している。平成23年度は東日本大震災等の予測不能な要因のため、調査の実施に関しては修正変更が生じた。このため次年度において、韓国(予定)等のアジア圏の国の訪日旅行経験者や旅行業者を対象に、ヒヤリング調査の追加実施を検討する。以上のように、平成24年度においては、平成23年度、24年度の研究を通して得られた情報、調査・分析結果を総合的に検討し、そこから導き出される事項について考察を加え、本研究の成果物として研究報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度においては、東日本大震災等の予測不能な要因が発生したため、調査の実施にあたり修正変更が加わり、平成24年度に繰り越される研究費が生じた。平成23年度から繰り越された研究費を含め、平成24年度の研究費については、主に日本国内の文化施設への訪問調査、観光産業関係者へのヒヤリング調査に関わる旅費、謝金、複写費、通信費、会議費に使用する。また、平成23年度に修正変更が生じた訪日旅行に関する調査について、韓国(予定)等のアジア圏の国の訪日旅行経験者や、インバウンドを中心とした旅行業者などを対象に、ヒヤリング調査の追加実施を検討している。その他に、研究資料用の図書費、研究成果発表用の費用として、研究費を使用する予定である。
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