2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23652050
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
武井 和人 埼玉大学, 教養学部, 教授 (80154962)
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Keywords | 新百人一首 / 足利義尚 / 三条西実隆 / 藤原為相 / 土左日記 / 一条兼良 / 古今集童蒙抄 / 校勘 |
Research Abstract |
本年度は、以下の古典籍の調査・研究を行った。 (1)異本『新百人一首』:平成24年度に入手した異本『新百人一首』の調査・考証を進めた。『新百人一首』計27本の伝本を調査し、その結果、23本が流布本、4本が異本であることを確認した。その上で、和歌の異同、識語の比較・検討を通して、中書本の流れを引くものが異本、清書本の流れを引くものが流布本という結論を導き出し、そのことを論文として発表した。また、立論の根拠として、異本を底本に全文の釈文を作成し、調査した諸伝本との校異を掲げた論文も発表した。このような成立背景をかんがみるに、『新百人一首』における校勘は、流布本・異本それぞれで別個になされるべきであり、やみくもに両系統の本文を校勘して混態本文を作ることは断じてあってはならないということが明白になった。 (2)為相本『土左日記』:従来の研究史でほとんど考慮の外に置かれてきた為相本『土左日記』の伝本としての意義を、戦前の堀部正二論に立ち戻り、再度見直し、定家本や為家本に代表される「蓮華王院本」とは異なる系統のものとして認知すべきではないか、という論を発表した。これは、為相本の実地調査に基づくものである。ここでも、安易な校勘による混態本文を否定することとなった。 (3)一条兼良自筆『古今集童蒙抄』:以前より調査・考察を進めていた京都女子大学附属図書館吉澤文庫蔵一条兼良自筆『古今集童蒙抄』の影印と釈文、解題を単行本として公刊した。兼良の古今学が、さまざまな系統の伝本を生み出したことを再度確認することが出来た。ここにおいても、一つ一つの伝本の本文がまず重んじられるべきで、安易な校勘は戒められるべきである、という結論に至った。
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