2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大内 英範 東京大学, 史料編さん所, 特任助教 (60462173)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 源氏物語 / 書写 / 本文 / 写本 |
Research Abstract |
本研究の目的とするところは、特に南北朝から室町期に書写された『源氏物語』写本の書写者を調査研究し、当時の文化的なネットワークを明らかにすることである。そのために、まずは書写者があきらかな寄合書の写本とその書写者の一覧表の作成、および書写者ごとの略歴をまとめることが必要である。今年度は上記に該当する写本の情報収集および整理を中心とした。全国の大学図書館等の所蔵目録類、博物館・美術館等の展示目録類、古書即売会目録等の調査、および国文学研究資料館の複製資料(マイクロフィルム・紙焼き写真)や公刊された複製本等を調査することで、写本の情報収集・整理をおこなった。源氏物語の写本一覧は、昭和35年の池田亀鑑編『源氏物語事典』に収録された大津有一氏によるもの以来、網羅的なものは作成されていない。その後発見された写本も少なくなく、今回作成中の写本一覧は、本研究課題のためのみならず、今後の『源氏物語』の写本・本文研究にとって重要な基礎資料になるものである。書写者についての情報収集・整理については、特に複数の写本の書写者となっている人物を中心に、東京大学史料編纂所の公開データベースの検索を中心として進めた。人物によって情報の多寡の差が大きく、整理の方法を詰め切れていないが、とりあえず収集できる範囲の情報を収集し、蓄積している。さらに、同一の寄合書『源氏物語』写本の書写者であるという共起性に着目して、『源氏物語』の書写という視点で見た文化ネットワークとして考える際に、それをコンピュータ上で可視化する方法について、情報学的な研究成果について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学図書館の蔵書目録等に記されている書誌情報が思いのほか簡潔なものが多く、書写者どころか年代の特定すら難しいものが多かった。しかし、国文学研究資料館にマイクロフィルムが所蔵されている場合、インターネット上に画像が公開されている場合など、ある程度の数の写本については現地に足を運ぶことなく確認することができた。そのほか、書写者の情報収集についてもおおむね順調に進んでおり、書写者どうしのつながり・むすびつきについての検証に必要な基礎データが蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国文学研究資料館におけるマイクロフィルム・紙焼き資料による調査および各種目録類による調査を進め、写本・書写者リストの充実に努める。本研究の主対象である南北朝から室町期書写の寄合書写本で、必要なものについて実地調査を行う。書写者については、書写者ごとに情報量の多寡の差が大きいため、その整理方法について検討を進める。また、一つの寄合書写本の書写者どうしの歴史学的な接点についての確認・調査を進める。書写者どうしのつながり・むすびつきを文化ネットワークとして再構成する方法および、それをコンピュータ上で可視化するための方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東京大学付属図書館および国文学研究資料館での目録類、マイクロ・紙焼き資料類の調査を先行し、予定していた複写の一部と実地調査を後に回したため、「次年度使用額」が生ずることとなった。当該研究費を含め、予定している複写および実地調査旅費に使用する計画である。
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