2013 Fiscal Year Annual Research Report
謡曲の詞章から見る能作者の特徴―特に世阿弥とその時代―
Project/Area Number |
23652053
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
矢野 環 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (10111410)
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Keywords | 能 / 世阿弥 / 拍子 / 多変量解析 / 源氏 / 千種香 / 組香 |
Research Abstract |
今年度は、米・リンカーン大学で行われた DH2013(デジタルヒュマニティー 2013)において、研究発表を行った。和訳:拍子の構造に基づく、能作者の同定―多変量解析の応用を評価して 高橋美都、手塚香奈、矢野環(同志社大学) 本研究では、第一に世阿弥作といわれている曲の特徴を世阿弥とその他の作者の曲のクセ小段の句の状況から探索する。さらに、堀池識語本や世阿弥自筆本の残る曲の詞章と現行五流を比較することで、作者の特徴や流派における伝承の違いを明らかにすることを目的とする。クセの主成分分析の結果、世阿弥の曲は番目ごとに比較的まとまっているのに対して、その他の曲は散らばっている。五流の詞章比較分析の結果からは、流派における伝承は一律でないことが明らかになった。宝生流は上掛とされているが、詞章が下掛と類似することも多く、また世阿弥本に近い事もある。世阿弥作とされている能のすべてを取り扱い、主要な他の作者も含めた、新規な研究であり、多くの新知見を得た。 また、室町時代の能・狂言とともに、その背景にある茶・華・香の研究も重要である。これについては、2つの論説を発表した。●竹幽文庫蔵『源氏千種香』の紹介 矢野 環・岩坪 健・福田 智子。社会科学 100号(43巻3) 27-51. 概要:竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ組香の作法を記した伝書である。安永二年(一七七三)の自叙をもつ。菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本は桐壺香・夢浮橋香がない。組香の方法は、蘭之園本に比べ、竹幽本の方が総じて複雑になっている。蘭之園本は、『源氏小鏡』(第一系統)を参照して作成されているようであるが、竹幽本は、『源氏小鏡』(第二系統)、あるいは『源氏物語』そのものに拠っていると考えられる。●竹幽文庫蔵『源氏千種香』の紹介(二).同一著者、社会科学 101号(43巻4) 39-61.
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