2013 Fiscal Year Annual Research Report
欧米との比較を介した日本近代文学及び映画における死の表象の再構築
Project/Area Number |
23652055
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Research Institution | Otsuma Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
城殿 智行 大妻女子大学短期大学部, 国文科, 准教授 (00341925)
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Keywords | 日本近代文学 / 映画 / 死生学 / 表象 |
Research Abstract |
日本近代文学及び映画において、死の表象がどのように生産され、社会に流通してきたのかを、欧米との理論的・歴史的な対比において明らかにすることで、実際には思考することも表象することも不可能な「死」といった超越的な審級を、文学及び映画がいかに経験論的な次元へ導入しようと試みてきたのか、その言語的・視覚的な思考の臨界におけるイメージ形成の分析を行い、臨床の場で発達してきた死生学に、学際的な表象分析の観点を付け加えた。 研究の遂行にあたっては、人間の死にまつわる事象を文学や映画の領域から網羅的に蒐集・分類することを単純にめざすばかりではなく、むしろ巷に溢れるそうした言語的・映像的な表現が、風俗的な主題としての死をたえまなく描きながらも、実際には何人も直視しえない己自身の死という事象そのものからだけは目を逸らすことにこそ貢献するさまと、そうした「気散じ」が生産する社会的な意味を、歴史的に把握しようと努めた。 その過程において、言語的・視覚的なイメージ形成の経験論的な臨界を探ることで、死の表象を逆説的に照射する、という本研究の目的及び方法に沿い、言語的・視覚的な物語言説の編成期において、現実と幻想の境を「異界」として描きつづけた泉鏡花の作品と、直接的な描写の組織的な回避を世界的にも稀な特質として指摘されてきた溝口健二の諸作を対象として、詳細な分析を加え、物語言説の範型が整序されていくに従い、語りえぬものがどのような位相に析出されていくのかを明らかにし、また「死」を始めとする表象不可能なものをめぐっていかに言語的・視覚的物語言説が組織されうるのかを論証した。
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Research Products
(1 results)