2013 Fiscal Year Annual Research Report
「イソップ寓話集」の流布と変容――イタリア・ルネサンスから日本の伝統へ
Project/Area Number |
23652068
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 博明 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70184679)
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Keywords | イソップ物語 / シュタインヘーベル / イソポのハブラス / 伊曽保物語 / イエズス会 / エンブレム・ブック / 司馬江漢 / 訓蒙画解集 |
Research Abstract |
1 前年度に引き続き、シュタインヘーヴェル版の他、ドルピウス版、カメラリウス版など、「イソップ物語」のラテン語版、およびスペイン語版について、ブリティッシュ・ライブラリーやロンドン大学ウォーバーグ研究所図書館を含む広い調査を行い、『イソポのハブラス』と『伊曽保物語』のテクストとの形態的・内容的な照合を行った。その結果、1456年刊行のスペイン語版、および1534年版(1539年版、1542年版)のラテン語版(ドルピウス版)からからの影響があることは明らかになったが、『イソポのハブラス』と『伊曽保物語』の原典のすべてが解明するまでには至らなかった。 2 「イソップ物語」が15・16世紀にヨーロッパで流布する背景として、中世以来の「教訓物語」の系譜を調査するとともに、それがイエズス会の学院(教育システム)において積極的に利用され、日本に渡来したイエズス会士によって邦語版が刊行されることになった意味について、思想的・宗教的背景も含めて考察した。 3 「イソップ物語」の多くには挿絵が含まれており、その点ではルネサンス期からバロック期にかけてヨーロッパに数多く刊行されたエンブレム・ブックと親近性があるとと見なすことが可能であるため、16世紀の大陸およびイギリスの当該のジャンルに関する調査を行い、とりわけ初期イエズス会におけるイメージの利用について考察した。 4 前年度に引き続き、司馬江漢に対する、ヨースト・ファン・フォンデルのオランダ語版イソップ物語」(1671年初版)の影響について考究するとともに、司馬江漢のオリジナルなエンブレム・ブックというべき『訓蒙画解集』について、典拠の探索も含めて英訳を試みた。
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