2014 Fiscal Year Annual Research Report
ジャン・コクトーの宗教観とオカルト―テクスト分析と図像解析による多角的研究
Project/Area Number |
23652069
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松田 和之 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (50239026)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | フランス文学 / コクトー / 教会美術 / 図像学 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学研究費助成事業補助事業期間延長の申請が承認されたため、当該研究の最終年度であった平成25年度の未使用額を平成26年度の外国旅費に充て、南仏コート・ダジュール地方でフィールドワークを実施した。主たる目的は、平成24年度に行ったフィールドワークの際に訪れることができなかったフレジュスのノートルダム=ド=エルサレム礼拝堂に関するデータ収集である。 同礼拝堂は、コクトーが構想し、装飾した最後の礼拝堂であり、その八角形をした特異な形状や内壁に描かれた壁画の不可解な図案の数々に興味は尽きないが、今回のフィールドワークで特に気になったのが、ステンドグラス上の様式化された騎士像、そして祭壇の背後に描かれた二輪の巨大な薔薇とその間に描かれた女性像である。常識的に考えれば、前者を聖墳墓騎士団の騎士、後者の女性像を聖母マリアと見なすべきなのかもしれないが、コクトーが、ヴィルフランシュ=シュル=メールのサン=ピエール礼拝堂とロンドンのノートルダム・ド・フランス教会の聖母礼拝堂において、特定の人物像に複数の属性を付与することでカトリックの宗教施設内に異端的なモチーフを導入しようとした可能性が指摘できることを考慮すれば、ノートルダム=ド=エルサレム礼拝堂においても、これらの人物像が巧みにカムフラージュされた別のアイデンティティを隠し持っている可能性は否めない。それを確認するためには、さらなる慎重な分析と考察が必要となる。本研究の研究期間は平成26年度で終了するが、翌年度以降も引き続き、その解明に取り組んでゆきたい。 また、コクトーが装飾した複数の礼拝堂内に見られる「眠る兵士」像に関して考察を深め、そこにギリシャ神話の牧神のイメージが投影されている可能性に思い至ったことも、今年度の研究成果であった。その内容は、次年度中に研究論文として公表する予定である。
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