2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒンディー語と日本語の属格後置詞および格助詞・準体助詞の対照研究
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23652084
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西岡 美樹 大阪大学, 世界言語研究センター, 講師 (30452478)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / インド:アメリカ:フランス / ヒンディー語 / 日本語 / 格助詞 / 準体助詞 / 属格後置詞 / 対照研究 |
Research Abstract |
本研究は、日本語の属格を表す格助詞もしくは準体助詞の「の」の分析、解明と、インドを中心に多くの母語話者をもつヒンディー語における属格の後置詞‘kaa’および同じく属格の表現に相当するといわれる接辞‘vaalaa’を伴う表現を対照し、両言語に共通して見られる普遍的特徴と個別的特徴を記述するものである。 前年度(平成23年度)は、まず6月にパリに出張した。海外での日本語研究関連の学会である 'XXIVemes Journees de Linguistique de l'Asie Orientale' に参加し情報収集を行った。また、知己の研究者をはじめ、東アジアの諸言語を主に研究している研究者たちと、情報交換や意見交換を行った。これに前後して、日本語の格助詞、準体助詞に関するこれまでの研究の主なものを見直し、文法機能、意味機能の整理を始めた。また、それらとヒンディー語との対応を想定したアンケートの作成も併せて開始した。 12月から翌平成24年1月には、インド人の日本語学習者を対象にアンケート調査を行うべく、インドへ出張した。研究協力者のDr. R. Narsimhanには、デリー大学でのアンケート調査を始めるにあたり、しかるべき日本語習度の大学院生(もしくは学部生、コース履修生)を斡旋していただくことについて協力を得られた。また、同じくヒンディー語母語話者であるDr. R. Kumarにも、日本語の例を基にしたアウトプットとなるヒンディー語について、インフォーマントが必要な際に協力いただくことになった。 なお、年度を通じて、国内の出張先で随時本研究に関する資料や情報収集を行い、また、海外の研究者との情報交換も行った。研究遂行に必要な研究環境の整備も随時行った。特に、ノートPC、ソフトウェア類、PC周辺機器、研究に必要な資料(書籍や映像メディア等)を整備、拡充した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本語の属格を表す格助詞もしくは準体助詞の「の」の分析、解明と、ヒンディー語のそれに相当する属格の後置詞‘kaa’およびこれの代替で用いられる接辞‘vaalaa’を伴う表現を対照し、分析することが主眼である。 本研究の開始年度にあたる平成23年度は、海外の日本語研究関連の学会に初めて参加し、日本語の研究動向についての情報収集をした。またその際、チベット系の言語を研究している知己の研究者をはじめ、日本語を含む東アジアの言語の研究者たちと様々な情報交換や意見交換をしたことで、対照研究のあり方を見つめ直すことができた。一方で、南アジア諸語を研究する海外の研究者たちとの情報、意見交換も本研究遂行にあたりヒントを与えてくれた。日本語の格助詞、準体助詞の整理に関しては、これまでの研究の主なものを見直し、文法機能、意味機能の整理、そしてそれらとヒンディー語との対応を想定したアンケートの作成に着手できた。 12月後半から1月初旬までのインド出張では、インド人の日本語学習者を対象にアンケート調査を行う段取りをつけることができた。さらに、アウトプットとなるヒンディー語について、インフォーマントの協力を得るための段取りもつけることができた。 前年度を通じて、日本言語学会をはじめ国内の出張先でも、随時本研究の資料、情報収集を行うことができた。また、研究遂行に必要な研究環境の整備も十分に行った。特に、ノートPCや出張先に携帯できるPC周辺機器、また研究に必要な資料(書籍や映像メディア等)の拡充ができた。 以上が、本研究がおおむね順調に進展していると評価できる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず日本語の格助詞・準体助詞の「の」に関する言語資料の収集、調査用のアンケートの内容の充実を図る。それを元に、インドの研究機関や教育機関で日本語を学ぶヒンディー語母語話者に対し、本格的なアンケート調査を行う予定である。それに向けて、昨年度から作成している暫定版アンケートの項目の妥当性を吟味し、項目を追加および修正しつつ、さらに妥当なものを作成する。特に日本語の格助詞・準体助詞「の」を使用した例につき、網羅的に例が挙がっているかどうかを十分に検討する。必要に応じて、言語学者、語学者の協力を仰ぐ予定である。 また、アンケートが回収できた後に、それらの分析を開始する。特に日本語の例に応じてアウトプットされているヒンディー語の句との対応については、ヒンディー語の属格後置詞‘kaa’および接辞‘vaalaa’が「の」の代替として使用されているか、使用されていない場合は何が使用されているか、に焦点を当て、綿密な分析および考察を行う。 さらに、今年度からは、それまでに得られた結果を暫定的にでも国内外で公表できるよう、準備を始める。特に、将来ヒンディー語を学ぶ日本語母語話者、日本語を学ぶヒンディー語母語話者に対する言語教育に生かすことができるよう、どちらかの言語に偏ったものではなく、対照研究型の手法で分析したものを公表することを目指す。併せて、研究結果を研究代表者のウェブサイト上での一般公開もできるよう、準備を行う予定である。 なお、前年度のインド出張は別の科研の用務と合わせることができたため、次年度使用額が発生した。これについては、今年度使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き、平成24年度も日本語の格助詞・準体助詞の「の」に関する言語資料の収集および調査用のアンケートの作成を行う。特に暫定版アンケートにある項目の吟味、および追加や修正を行う。このため、資料整理やアンケート作成の補助業務に対する謝金が必要となる。 また、インフォーマントに対する調査として、前年度に引き続き、アンケート調査を本格的に開始する。海外の研究協力者および日本語を学習しているインフォーマント(ヒンディー語母語話者)を交えて、アンケートの項目に関する意見交換、議論を出張予定であるインドで行う。その折には、調査先でヒンディー語に関する文献資料、映像資料の新しいものも収集する。このため、調査、資料収集のための旅費、インフォーマントへの謝金等が必要となる。 さらに、平成24年度から、前年度までに出揃った言語資料および研究成果をデータベース化し、研究代表者のウェブサイト上で一般公開できるよう準備をする。同時に、それまで得られた研究成果を、国内外の言語学、ヒンディー語学、日本語学の関連学会で、随時公表できるよう、準備を行う。したがって、専門知識や専門技術の提供者に対する謝金、また、英文校閲者等に対する謝金が必要である。 その他、年度を通じ、研究に必要な物品類を随時購入し、研究環境の拡充を図る予定である。前年度繰り越した残額(次年度使用額)は、これらの物品購入費に充当する予定である。
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