2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23652085
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
千島 英一 熊本大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20167513)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 和製漢字 / 中国語音 / 文字情報 / 台湾 |
Research Abstract |
本研究は、一般に和製漢字と呼ばれている日本で作られた漢字について、中国語音ではいったいどのように発音したらよいかを研究対象としたものである。というのは、ごく一部の文字を除いて、和製漢字の多くが中国で出版されている辞典にも、日本で出版されている中国語辞典にもなんら記載がなく、これまでずっと、教学上、学習上の両面において、悩ましい問題の一つであった。また、これまでの和製漢字の研究はわが国の国語研究の一環としての研究であったため、和製漢字に中国語音をどう付与すべきかといった研究についてはきわめて乏しく、漢字文化圏における和製漢字の位置づけ等についても緒についたばかりと言っても過言ではなかった。そこで、本研究では和製漢字一つ一つにもっとも合理的と考えられる中国語音を付して、文字情報の国際化に即応させることを研究目的の一つとした。以下に、年度内における研究の展開ならびに成果の一部について述べる。 1.文献資料の調査ならびに資料の収集:この結果、「麿」のような「麻+呂」といった会意字である和製漢字の中国語読音には、中国・台湾で出版されている各辞典ではmi, mo, lu, ma luといった具合に、さまざまな字音があてられていることがわかった。また、「峠」字も然りであって、ka, qia, guといった字音があてられていた。 2.フィールド調査:30数年前、筆者が台湾に留学していた際、台湾の中部や南部に「峠」字がついた地名があるのを見つけていた。そこで今回、現地フィールド調査を行った結果、現在では多くの人が「峠」の字音をその旁の字形が似ている「〓」kaの字音で発音していたことが分かった。また、台湾電力公司へ行き、同社が発行している「電價表」(電気料金表)を入手し、その中で、植民地統治下以来、現在もなお「瓩」(キロワット)が使われていることが分かった。 3.研究実績:上記のようなことを通じて、雑誌『東方』(第366号)にて<「栃」の中国語音はliそれともxiang?-和製漢字の中国語音をめぐって>を発表し、現在、中国側でliとする字音に対して、正しくはxiangでなければならないと論証した。また、こうした研究を通して、和製漢字の中国語読音については、中国側が決めるのではなく、その字の成り立ちにもっとも詳しい日本自身が決め、国際的に発信すべきであると主張するにいたった。
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Research Products
(1 results)