2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652091
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
神田 和幸 中京大学, 国際教養学部, 教授 (70132123)
|
Keywords | 手話 / サイン / 難聴者 |
Research Abstract |
東京・大阪・名古屋の専門学校に依頼する予定であったが、大阪に絞り現地手話サークルの協力を得て、ろう者・難聴者の多数いる企業に出向き、生育歴や生活の不便などについて手話で話してもらい、ビデオに記録した。またその記録を3名の通訳者にすべて文字起こしをしてもらった。その結果、想定していたよりも、記述者によるゆれが大きく、翻訳記述の難しさが改めて浮き彫りになった。これまでの研究では、ほとんどの場合、一人の記述者の翻訳に頼っていたが、その手法に問題点を投げかける結果となった。改めてすべての記述を分析し、記述者との合議によって、相違点について、どうして解釈が異なったのかについての討議を行うことになった。そのため、研究期間を延長し、さらなる分析を深めることとした。 学会発表は海外発表1件にとどまった。14th International Conference on Computers Helping People with Special Needs(ICCHP 2012), にA Guide System for the People with Handicap at Public Facitities in Normal and Emergent Situation-A Case Study at Kagoshima City Aquarium by Kazuyuki Kanda, Tsutomu Kimura and Mika Otsukaと題して、他の研究と併せて研究成果の一部を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究自体は順調に進み、データ収集は順調であった。しかし手話記述の段階で、記述者の翻訳にゆれが予想外に多く、その原因究明が新たな課題となった。従来の研究手法は記述者は一人であり、翻訳のゆれはそれほど注目してこなかったが、本研究は念のため複数記述者を採用したところ、難聴者手話ではゆれは少なかったが、ろう者手話ではゆれが大きかった。これは記述者の熟練度によるものなのか、解釈の幅の問題なのか、ニュアンスの問題なのか、一見してはわからなかった。本研究が目的とする補聴サインの作成にとって、意味のゆれが大きいことはコミュニケーションにおいて重大な障害となる可能性を示唆しており、新たな課題が発見されたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
記述データを研究者が比較し、同一個所、相違個所を洗い出して、相違点について、記述者と録画ビデオを観ながら、討議する。そして相違した理由について仮説を立て、このデータを元に検証する。ことにろう者の手話に相違が多いのは、表情をどう読み取るかというニュアンスの問題であろうと想像できるが、難聴者の場合は表情も少なく、口形がつくことが多いため、記述の相違はないとの予見であったが、その予見がはずれた理由が重要であると認識している。 このため本年度は研究のまとめとして、補聴サインの実例を録画し、手話単語のもつ意味のゆれの大きさについても、仮説を提唱したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は新たな課題発見のため、実例を録画するに至らなかった。そのためモデルを用いた録画編集を委託できず、その他の執行ができなかった。本年度は実例録画委託のため、その他400,000円を想定し、成果発表などのため国内旅費72,140円を想定して、総残額472,140円を執行する予定である。
|