2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652094
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
本田 盛 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (30132319)
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Keywords | 言語の地理的変異 / 生成文法理論 / 国際情報交換 / ヨーロッパ / パラメータ |
Research Abstract |
平成25年度は平成24年度におこなうことができなかったイタリアの研究者との地理的言語変異の普遍的な統語的性質や仕組みについての議論をおこなった。その結果、各言語において言語変異にかかわる共通のメカニズムが見られるという研究の方向性については、おおむね理論的なサポートを得られることはわかったが、他方、それを証明するための実証データならびに検証方法についてはいくつかの問題点があることが明らかとなった。たとえば、動詞要素や文に関連した機能範疇が目的語などによって分離される多くのヨーロッパ言語と異なり、日本語では動詞要素が文の右方に連続して出現するために、動詞要素の移動が起こることをデータとして証明することが難しいなどの困難がある。つまり日本語では主要部が補部の右側に現れるため、すべての主要部が文末に集中することになる。ヨーロッパ言語(ゲルマン語、ロマンス語)における言語の地理的変異にかかわる要素も文末に連続して現れるために、移動などの実証データを得るためには検証過程を精査する必要があろう。また音韻的な特徴が統語的な区別を反映するのかどうかという問題も関連した問題として存在する。 研究計画には日本語の方言変異のデータベースを作成するためのパイロット研究も含まれているが、コーパス的なデータだけではなく、質的なデータ分析の必要性が大きい。母語話者からどのように統語的なコントラストを引き出すか、そのためにどのように判断のためのデータ文を構築するかも重要なポイントとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
生成文法理論の視点から言語変異とパラメータの関係を研究し、日本語の変異のメカニズムを明らかにすることを目的にしているが、当初予定していた東北地方での調査・研究が東日本大震災によって困難となった。これまで3年間が経過したが、今なお言語調査が難しい状況である。このため十分な実証データが得られない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は言語調査の対象地域を当初予定していた大舟渡市から沖縄・奄美地方に変更し、文の右方領域、とりわけ補文を表示する要素が言語変異に重要な役割を果たすことを、母語話者を対象にした調査で、実証的に明らかにする。可能であれば、沖縄語の首里方言と北沖縄語である奄美方言の2つの方言を調査し、それぞれ分析、比較をおこなう計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災の復興状況により、言語実地調査のめどがいまだ立っていないことが理由となり旅費等に当てる部分について未使用額が生じた。 調査地を変更して実地調査をおこなうことによる調査旅費、専門知識の提供に対する謝礼、資料収集、文具への使用を計画している。
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