2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23652094
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
本田 盛 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (30132319)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 統語論 / 喜界語 / 方言変異 / 生成文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
生成文法理論による日本語方言研究の実証研究として、奄美大島の奄美市から69キロ北東に位置する喜界島において、研究協力者の今西祐介氏とともに言語調査をおこなった。喜界語はユネスコによって危機言語に指定されているが、集落ごとに特徴の異なる方言が使われている。2010年に国立国語研究所が同島において大規模な言語調査をおこない、その報告書も出版されている。今回の言語調査では中里集落に限定して、格助詞と格体系、従属文の文末要素、名詞句内部の省略現象などを中心として、二人のインフォーマントへのインタビューの形式でデータ収集をおこなった。インタビューはこれらの調査項目に関連する文をインフォーマントの直感で可能か不可能かを判断してもらう形式ですすめた。 結果として、理論的な側面と関連した、いくつかの興味深い事実が発見できた。第1に、ドイツ語、オランダ語などで方言変異と関連しているとされる従属文の文末要素が喜界語では東京方言のパターンを示した。東京方言と異なるパターンが関西方言などでは報告されている。第2、に名詞句内部の省略現象(「ぼくのは」など)は喜界語では許されず、必ず「もの」に相当する代名詞(的)なものが必要になる。第3に、喜界語の格助詞と格体系は興味深いパターンを示した。「の」に相当する喜界語の属格格助詞は「ぬ」であるが、ゼロ属格も多くあり、その使い分けにはレギュラーなパターンがあることがわかった。さらにこの「ぬ」は主格助詞としても使われるが、その時は述語との関係もあり、興味深い。さらに対格助詞「を」に相当する助詞はは存在せず、「よば(おば)」という助詞があるが、この助詞が現れるか対格助詞を何もつけないかの選択は目的語の性質と関連しているかもしれない。 今後も動詞変化や敬語体系などの調査・研究も必要となるであろう。
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