2011 Fiscal Year Research-status Report
日本語の統語構造は発話のタイミング制御を規定するか
Project/Area Number |
23652095
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
東 淳一 流通科学大学, 商学部, 教授 (90202621)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本語音声 / 言語リズム / モーラ / Final Lengthening / 統語構造 / テンポの揺れ / 音楽演奏のテンポ |
Research Abstract |
本研究の目的は日本語のいわゆるモーラリズムのタイミングが統語構造により影響を受けるのかを調査し、タイミング制御のメカニズムを探ることである。本年度はまず東京方言話者1名、近畿方言話者1名について、テスト文発話の文節長ごとの継続長を測定し、統語構造との対応について分析を行った。テスト文の各文節は文節単独発話時の継続長をもとに相対的な伸縮度合を計算した。その結果、文末や深い統語境界の前では文節継続長の引き伸しが観察された。ただし引き伸しのある前の文節ではその継続長が相対的に短くなる現象が頻繁に観察された。また、たとえば4つの文節から成る文発話の場合、統語構造に関係なく相対的継続長が「短長短長」のようなパタンとなることもあった。 次にクラシック音楽において細やかなタイミング制御が不可能と思われる早いパッセージの合奏作品の音響分析を行い、たとえば4小節ごとなどの小楽節、あるいは楽節といったまとまりにおいて各小節の長さの揺れがどうなっているのかを音響分析した。その結果、このような音楽演奏においても1つの小楽節中の最後の小節の継続長は引き伸される傾向があることがわかった。また4小節から成る小楽節において3小節目つまり引き伸しのある小節の前では逆に継続長が短くなる傾向も観察された。小楽節中で各小節の継続長が「長短長短」となる現象も時おり観察された。 以上より、日本語発話において文節レベルではあるが文末や統語構造の切れ目の前では相対的な継続長の引き伸しがあることがわかったが、さらに引き伸し現象がある前の文節で継続長が相対的に短くなる、4つある文節からなる文発話で統語構造に関係なく相対的継続長に「短長短長」のようなパタンが観察されることがある等については、音楽も含めた人間の一般的リズム活動を支配する高次の機序が存在している可能性があることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施において、研究に必要な機材の選定と導入が遅れ、このためテスト文の音声分析については、十分な音声資料の収集と分析ができなかった。これはテスト文の発話者に実際に発話をしてもらいデジタル録音するのにかなりの手間と時間がかかり、また収録した発話の音声分析も多くの時間が必要とされることに起因している。 しかしながら、クラシック音楽の音響分析については、すでに市販CDなどの音源が多数あるため、こちらの分析を予定以上多く実施することができた。このためトータルではおおむね順調に研究は進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、さらにテスト文の収録と音声分析を継続し、音楽演奏のテンポの揺れについても分析を継続する。 同時にバランスの取れた音声コーパスを分析することで、モーラレベルでの継続長の固有値を独自に求め、それをレファレンスとして、収録されたテスト文などについてモーラレベルで継続長の伸縮を分析したい。 なお、今後は国内外での研究発表の機会を増やし、同時に音声研究およびその周辺領域のトップクラスの研究者からの指導助言についても十分に得る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度については物品費はパソコン関係の消耗品および音声コーパス購入のために使用する。内外での学会発表のための旅費、音声研究およびその周辺領域のトップクラスの研究者からの指導助言を受ける際に移動に使用するための旅費を多く確保したい。また、テスト文の発話はまだ依頼する必要があり、研究者、専門家の指導助言に対する謝金もあわせ、謝金もある程度確保する予定である。
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