2012 Fiscal Year Research-status Report
日本語の統語構造は発話のタイミング制御を規定するか
Project/Area Number |
23652095
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
東 淳一 順天堂大学, 医学部, 教授 (90202621)
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Keywords | 言語リズム / 韻律的特徴 / 日本語 / 音楽テンポの揺れ |
Research Abstract |
本研究の目的は日本語のいわゆるモーラリズムのタイミングが統語構造により影響を受けるのかを調査し、タイミング制御のメカニズムを探ることである。本年度については東京方言話者4名、近畿方言話者4名、そしてその他方言話者2名について、テスト文発話の文節長ごとの継続長を測定し、統語構造との対応について分析を行った。テスト文の各文節については文節単独発話時の継続長をもとに相対的な伸縮度合を計算した。分析の結果、文末や深い統語境界の前では文節継続長の引き伸しが観察された。ただし引き伸しのある前の文節ではその継続長が相対的に短くなる現象が頻繁に観察された。また、前年度の研究同様に、たとえば4つの文節から成る文発話の場合、統語構造に関係なく相対的継続長が「短長短長」のようなパタンとなることが多かった。 クラシック音楽の音響分析も引き続き実施した。やはり早いパッセージの合奏作品の音響分析を行い、小節長を測定したが、1つの小楽節中の最後の小節の継続長は引き伸される傾向があることが今回も確認された。また4小節から成る小楽節において3小節目つまり引き伸しのある小節の前では逆に継続長が短くなる傾向も観察された。小楽節中で各小節の継続長が「長短長短」となる現象も時おり観察された。しかしながら、この傾向とは異なるタイミングパタンを呈する演奏もあった。 以上より、文節レベルではあるが文末や統語構造の切れ目の前では相対的な継続長の引き伸しがあることが新たな音声資料からも確認された。また、引き伸ばされた文節の前の文節で継続長が相対的に短くなる、4つある文節からなる文発話で統語構造に関係なく相対的継続長が「短長短長」のようなパタンを呈するという現象は、新たな音声資料の分析結果も含め観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度では2件の海外の学会での発表を予定していたが、そのうち1件は授業日程の関係で、断念せざるを得なかった。ただし、国内の学会、小規模研究会においては発表後に示唆に富んだ意見、コメントが多く得られた。なお、音声資料の収集と分析にはかなりの時間がかかることは変わりなく、データ量としてはやや不足ぎみである。クラシック音楽の音響分析については、市販CDなどの音源が多数あるため、音楽演奏の音響分析については比較的多く実施することができた。このためトータルでは、研究の進展状況はやや遅れ気味であると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度については、さらにテスト文の収録と音声分析を継続し、音楽演奏のテンポの揺れについても分析を継続する。ただ音声収録については、平成24年度の研究発表時のコメントに4モーラのみの文節からなる文は口調がいいため、何らかの特別なリズムパタンを生じるのではないかというものが多かったため、文中の文節のモーラ数にバラエティをもたせたものも音声資料とする予定である。また、バランスの取れた音声コーパスを入手し分析することで、モーラレベルでの継続長の固有値を独自に求め、それをレファレンスとして、文中でのモーラレベルで継続長の伸縮を分析することも行いたい。 なお、平成25年度も国際学会や国内の学会での研究発表は継続して行い、音声研究およびその周辺領域のトップクラスの研究者からの指導助言についても引き続き得たい。 また、平成25年度は本研究の最終年度となるため、成果報告書の刊行も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
音声資料の収集をまだ継続するため、音声資料提供者のための謝金を若干確保する。また、音声コーパス、パソコン関係消耗品購入のため物品費も確保したい。国内外での学会発表のための旅費、音声研究およびその周辺領域の研究者からの指導助言を受ける際の謝金、移動に使用するための旅費をやや多く確保したい。本年度は成果刊行物も作成するため、印刷費も確保する。
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