2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の統語構造は発話のタイミング制御を規定するか
Project/Area Number |
23652095
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
東 淳一 順天堂大学, 医学部, 教授 (90202621)
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Keywords | 統語構造 / モーラリズム / 音楽演奏 / フレージング / Final-lengthening / リズムの揺れ |
Research Abstract |
過去2年間の研究のまとめとして学会での研究発表に注力するとともに、この3年間学会等で指摘されてきた研究方法上の問題点の検討を行った。学会等で何度か指摘された問題点の1つは、文節中の語のアクセント型で頭高型のものが多く、文節頭の急激なピッチ上昇を実現するために文節の継続時間が長くなるのではないか、つまり統語構造とは関係なくアクセント型による影響を受けて文節長が大となっているのではないかという指摘である。もう1つの指摘は文末の文節に関してであり、「見えた」、「晴れる」のように、その文節中でピッチの下降がある場合には文末モーラの母音長が短くなる傾向があるが、そのようなケースは分析したのかという点である。同様に多かった指摘は、文節が4モーラに統一されており口調が良く、特殊なリズムパタンが生じたのではないかというものである。本研究では、単純に言えば文節のみの繰り返し発話の長さの平均値をもとに文発話における当該文節の長さを相対的に分析しており、これらの問題は該当しないはずである。ただし念のため「金丸が借りたカレンダーを帰りに返します」のような新たなテスト文発話についても音声分析した。その結果、やはり深い統語境界直前の文節は相対的に長く発話されることがわかった。また、これら一連の新しいテスト文発話でも、最後から2つ目の文節は相対的に短く発話されることが明らかになった。これらの結果と昨年度までの分析結果すべてから、日本語の文節長は統語構造に規定されて伸縮している可能性が大であると考えられる。フレーズの最後から2つ目の要素が相対的に短くなる、さらに時に構造に関係なくフレーズ中のユニットの長さが「短長短長」のようなパタンをとるという現象は音楽演奏においても観察され、人間のリズム活動の根底にはこのような何らかのリズムパタンの揺れを生み出すメカニズムが存在しているのではないかと考えられる。
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