2012 Fiscal Year Research-status Report
非母語話者の知覚による日本語破裂音における有声/無声の対立に関する研究
Project/Area Number |
23652099
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩井 康雄 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 教授 (30273741)
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Keywords | VOT / 日本語学習者音声 / 破裂音の有声/無声 |
Research Abstract |
本研究では、日本語における破裂音の「有声」/「無声」の対立を、非母語話者の知覚を利用して明らかにすることを目的としている。先行研究において日本語破裂音の有声性に関してVOTが中心的な指標として働いていない可能性が示唆されており、本研究では改めて日本語破裂音の「有声」/「無声」の特徴を捉え直したいと考えている。 平成24年度は、平成23年度に引き続き、研究計画の2点目に挙げた「非母語話者個々人の生成・知覚特性の分析」を中心に研究を進めた。朝鮮語、広東語、タイ語、ジャワ語、スンダ語、ブルガリア語を母語とする話者各1名(計6名)について日本語の生成と日本語母語話者(1名)による発話、自身の日本語発話、他の学習者(自身を除く5名)による日本語発話の聴き取り調査およびそれぞれの発話についての音響分析を行った。平成23年度に行った予備的な調査結果を受けて、1)有気/無気の対立を持ち、有声/無声の対立を持たない朝鮮語、広東語話者、2)有声/無声の対立を持つジャワ語、スンダ語、ブルガリア語話者、そして3)有気/無気の対立に加え、有声/無声の対立をも持つタイ語話者という、それぞれの母語の音韻体系からだけでは捉えられない差異が存在する可能性を探究した。特に平成24年度には、それぞれの発話の音響分析を進め、聞き取り調査結果との相関を検討した。また聞き取り調査で誤聴の多かった語の音響分析結果と誤聴を起こした被験者自身の発話の音響分析結果との対応についても検討した。 学習者の知覚を単なる誤りとするのではなく、積極的に利用することで、これまで見過ごされていた日本語破裂音の「有声」/「無声」の特徴を捉える可能性が示されたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心が研究計画の2)にあげた非母語話者の知覚上の特性を利用して日本語における破裂音の「有声」/「無声」の特徴を明らかにすることであることから、2)を中心に進めている。加えて研究計画上は明確には指摘していなかった、自身の発話(非母語話者による学習言語である日本語の音声)に対する知覚感度についても、音響分析結果を踏まえた検討を行った。 研究実施2年目の達成度としては、一部に計画外の分析を進めた部分はあるが、最終年度である平成25年度に向けて概ね順調に進捗しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した知覚実験を量的に増やしながら、本研究課題の中心となる2)非母語話者個々人の生成・知覚特性の分析を更に進めていく。また、平成24年度から行っている音響分析結果を利用し、被験者の知覚様態をその生成・知覚特性と照らし、何らかの相関を見いだすことができればと考えている。それらの結果から、本研究課題の最終目標である日本語破裂音の「有声」/「無声」の特徴について、新たな知見を得るよう努める。当初の計画通り、本研究課題の最終年度として、研究成果の公開に向けて、研究のまとめに取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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