2013 Fiscal Year Annual Research Report
非母語話者の知覚による日本語破裂音における有声/無声の対立に関する研究
Project/Area Number |
23652099
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩井 康雄 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 教授 (30273741)
|
Keywords | 破裂音の有声性 / VOT / 日本語音声教育 |
Research Abstract |
本研究は、従来単なる誤りとされてきた、多様な母語を持つ学習者の多様な知覚の中から、現在の日本語破裂音における有声/無声の対立の実態を捉えようとするものである。 これまで学習言語としての日本語は、一定の特徴を持つものとしてモデル化され、有声/無声の対立については、その特徴として声帯振動の相対的タイミング(VOT)が指標とされてきた。生成・知覚において、その特徴を身につけることが「習得」であるとされてきたのである。しかしながらVOTが必ずしも有効な指標ではないことを示す研究も現れ、理論上の基盤を求め、学習者に対し新たな指標を示すという課題を生んでいる。 本研究では、非母語話者の知覚を利用して、日本語における有声/無声の対立の実態をさぐるために、1)日本語母語話者の音声収集、2)非母語話者個々人の生成・知覚特性の分析、3)非母語話者による日本語の知覚実験、4)日本語音声実態の分析、5)複数因子による多元的モデルの構築を目指してきた。1),4)については、既にある程度実態調査が進められており、その成果を利用した。また最終目標ともいえる5)については、本挑戦的萌芽研究の目標としては、やや大きすぎるものであった。 2),3)については、最終年度である25年度においても実験、分析を進めてきた。その中で確認できたのは、学習者間の多様性、母語における対立の多様性、ひいては日本語(社会言語学的多様性を含む)の有声性の多様性である。 挑戦的萌芽研究として進めてきた本研究は、現段階では必ずしも十分な成果を上げたものとは評価されないかもしれないが、新たに研究組織を組み「多言語学習者の発話と知覚による破裂音の有声性と韻律の関係に関する研究」(研究課題26370449)として、対象言語の拡充と日本語の方言的差異をも視野に入れた研究へと進む方向性を確定できたことは、一定の成果であると考える。
|