2011 Fiscal Year Research-status Report
エスチュアリ英語の拡がりが及ぼす英語意識の変容を探る
Project/Area Number |
23652106
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柴田 知薫子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (10296204)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 孝子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (90302447)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | エスチュアリ / 母音推移 / 英語教育 |
Research Abstract |
平成23年8月、代表研究者がロンドン大学へ赴き、ロンドン出身の20歳代の女子学生からエスチュアリ英語の言語資料を採取した。一方、大学内外でロンドン在住・在勤者の自然発話を観察したところ、予測していた長母音の二重母音化とは反対に、二重母音の単母音化という変化が進行していることが判明した。採取した言語資料にも、明らかにこの変化が表れている。 帰国後、採取した言語資料を音声分析ソフトウェアを用いて分析したところ、二重母音化した長母音の第1フォルマントは直線を描いており、弟2フォルマントに上下動があることが明らかになった。これは、単母音が割れる(二重母音化する)際には、舌が上下に動くのではなく、前後に動いていることを示している。近代英語期に生じた大母音推移も、高母音の中舌化に端を発しており、母音の中舌化が二重母音化の前兆であることを示唆している。 二重母音の推移は、エスチュアリやコクニーといったロンドン英語の特徴とされている。しかしながら、イギリスの威信言語である容認発音(PR)の話者にも、特定の音節に強い強勢を置いて発話する際には、高母音の割れが観察される。英語の母音は中英語期に長短の対立を失い、二重母音が長母音の機能を果たすようになったことからも、二重母音化という過程が強勢音節の長さを維持するために必要とされることが推察される。 他方、分担研究者は日本国内に在住するイギリス英語話者から言語資料を採取した。必要な音声処理を施した後に同様の分析を行い、比較対照する計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における「研究の目的」は言語資料の収集と基礎的な分析にあった。この目的は、ロンドン在住の若年層から言語資料を収集し、音声波形分析ソフトウェアを用いて第1フォルマントと第2フォルマントを分析することによって達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
第2フォルマントには変化が見られたものの、第1フォルマントには予想に反して変動が観察されなかったので、第1・第2フォルマント以外の音声特性に何らかの変化が見られないか、さらに分析を続ける計画である。 ロンドン在住者と比較対照するために、分担研究者が日本在住歴の長いイギリス英語話者の言語資料を収集する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は上記の音声波形分析ソフトをアカデミック・ライセンスで購入したので、平成24年度は音声分析専用のモバイルパソコンを購入し、このソフトを導入する計画である。これにより、平成25年度は現地で収集した言語資料を即座に分析することができるようになる。 分担研究者は、言語資料収集のための国内旅費を必要とする。
|