2013 Fiscal Year Annual Research Report
エスチュアリ英語の拡がりが及ぼす英語意識の変容を探る
Project/Area Number |
23652106
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柴田 知薫子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (10296204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 孝子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (90302447)
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Keywords | Estuary English / vowel system / language change / language variation / Lingua Franca |
Research Abstract |
英語を母語としない人々がリンガ・フランカとしての英語(ELF)を通してコミュニケーションをはかるとき、それぞれの母語の影響を可能な限り排した英語とはどのような言語であるべきか、そのモデルを探すために、1980年代からロンドン周辺で普及しているエスチュアリ英語(Esturary English)の現状を調査することにした。 イギリス英語の標準とされてきた容認発音(Received Pronunciation: RP)は、かつて担っていた威信言語としての役割を失いつつある。そこで、30年ほど前からロンドン周辺の若年層に浸透してきたエスチュアリ英語がELFのモデルとなり得るかどうか、2011年から現地での調査を開始した。まず、ロンドン大学で20歳代の女子大学院生3名から言語資料を採取し、音声分析ソフトウェアで分析したところ、以下の分析結果が得られた。(1)高舌母音/i/, /u/が中舌化しながら二重母音化しつつあり、その結果として単数形のgooseと複数形のgeeseは音声上の区別がなくなっている。(2)複母音の一部が単母音化し、外来語として日本語に借入された語形との差が拡大しつつある。(3)日本語話者にとって最も弁別が困難な後舌中母音と後舌低母音は、それぞれ日本語の「ア」と「オ」に近い音になっている。以上の3点のうち、(1)と(2)はELFのモデルとしては望ましくない変化であり、エスチュアリ英語は英語の標準に適していないと結論付けた。2013年には、英国中部のシェフィールド大学で開催された「言語の変化と変異」に関する学会に参加し、エスチュアリ英語はすでに過去の流行となったことを確認した。 結論としては、General Britishに基づき、日本語話者にとって学習可能な長短の区別のある母音体系を採用することが最も現実的な方策である。
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