2011 Fiscal Year Research-status Report
日本語非母語話者会話における修復とその相互行為的意味:日本語学習への応用に向けて
Project/Area Number |
23652115
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
初鹿野 阿れ 名古屋大学, 国際交流協力推進本部, 特任准教授 (80406363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 けい子 富山大学, 人文学部, 教授 (50313581)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 他者開始修復 / 自己開始修復 / 日本語非母語話者 / 会話 |
Research Abstract |
本科研の目的は、日本語非母語話者の会話における「修復」を分析し、その相互行為的意味を明らかにすることである。また、それに基づき日本語教育への応用を探ることを目指している。23年度の目標は、データの収集及び、その文字化、そして、その発話データから「修復」が起こっている箇所を特定し記述・分析することであった。 データ収集については、日本語非母語話者を含む3人会話のデータ、約1時間を4組、日本語母語話者3人会話のデータ、約1時間を3組収集した。会話は、3人のうち2人は初対面とし、ビデオカメラで録画すると同時にICレコーダーで録音した。会話参加者には、事前に研究の主旨を説明し、個人情報に配慮する旨きちんと伝えた上で、承諾書にサインをもらった。収集にあたっては、名古屋大学及び富山大学の学生に協力を依頼した。 録画、録音したデータは、業者に依頼し、まず大まかな文字化を行った。録画データを見ながら、その文字化資料をし、全体を把握、その上で、研究者代表者と分担者が分析対象箇所を絞り、順次詳細に文字化していった。 収集したデータから、修復が起こっている箇所を特定した。会話参加者が発話、聞き取り、理解に関する問題をやり取りの中に顕在化させ、それに対処している部分を抽出し記述を行った。 今後、分析結果を日本語教育に応用するために、現在一般的に使用されている日本語教材、特に聴解練習の会話の中で、「修復」が現れているか、また、現れているとしたらどのような「修復」が扱われているかを調査、分析した。その結果、教材では非常に限られた形での他者開始修復が現れていた。いくつか例外はあったが、実際の修復と比べて、非常に単純化したやり方が多く扱われていた。「修復」は学習者のコミュニケーションにとって不可欠な活動である。実際の会話に現れるような複雑な「修復」のやり取りを教材に使用することの必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね順調に進んでいるが、データ収集が予定より多少遅れている。収集データは、初対面2人を含む3人の会話としているため、条件に合う協力者を集めることが難しくなっている。また、3人の都合を合わせてもらうことに時間がかかることもその原因である。この条件は、分析のしやすさのためであるため、それにより分析結果に深刻な影響があるとは言えない。条件を少し緩やかにすることも考慮に入れつつ、不足分のデータ(母語話者同士の会話、非母語話者を含む会話、一組ずつ)を24年度に集めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、引き続きデータの収集を行う。23年度はデータの数が不足し、かつ、そこに現れた「修復」の数はあまり多くなかった。そのため、来年度も最低2組のデータを収集する予定である。収集したデータについては、昨年度同様、大まかな文字起こしを外部業者に依頼し、それを参考に分析箇所を絞った上で、研究代表者と分担者が協力して詳細に文字化する。 23年度抽出した修復箇所を基に、そこで行われている修復の組織を記述分析する。特に、3人であることが修復の連鎖に及ぼす影響、および、同じ会話の中に現れる非母語話者と母語話者の修復組織の違いに注目する。また、修復は、より大きい会話の流れの中で起こるものである。したがって、修復の組織だけを分析したのでは、やりとりの実態を捉えることは出来ない。修復が現れる前後の相互行為を分析し、その行為の中で、修復がどのような役割を担っているのかを明らかにする。 研究の成果を中間報告として、学会、研究会等で発表で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の直接経費は200,000円、前年度からの繰り越しが19,462円である。物品費、50,000円はデータ分析用ソフト、書籍、文房具等に使用予定。24年度に収集予定のデータの文字起こし費用のため、物品費を当初予定額より減額し、その他に回す予定である。旅費70,000円と、前年度繰越金19,462円は、研究者2名が打ち合わせ等のため相互に行き来するための出張費、及び、研究分担者が名古屋で行われる日本語教育国際研究大会2012の発表のために出張する旅費として使用。資料整理等のためのアルバイト雇用に、人件費・謝金として40,000円使用する予定。その他として、データの文字起こし費用40,000円を使用予定である。
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Research Products
(1 results)