2011 Fiscal Year Research-status Report
ビジュアル・シンキング・ストラテジー(VTS)を援用した新しい日本語教育の試み
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23652118
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
橋本 智 徳島大学, 国際センター, 准教授 (90466920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山木 朝彦 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (20158083)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | VTS / 日本語教育 / ディスカッション / 美術教育 |
Research Abstract |
【初年度の具体的内容】 1.ビジュアル・シンキング・ストラテジー(VTS)に関する情報収集。VTSを実際に行っている複数の美術館へ行き、担当している学芸員にインタビューした。また、VTSを使って外国語を教えている公立学校にも取材に行き、実際のVTSセッションを見学、分析した。加えて、VTSの創始者の一人にもインタビューを行った。 2.VTSの理論の理解。VTSの基礎となっている理論とその方法を調べた。そのために、文献を調べたり、日本で行われたVTSのセミナーに参加して理論と実践を学んだりした。 3.日本語教育へのVTSの援用に関する調査。どのようにVTSを日本語教育に応用できるかを検討し、実際にVTSを使ったセッションを8回、比較するために同じ作品を使ってVTSでない授業を2回行った。最初の4回分(日本語中級と上級の学生)は文字化し、日本語のレベルに応じたVTSの方策について考察している。また、参加した学生とVTSを行った教師にアンケート・インタビューをし、VTSセッションについての感想などを聞いた。 4.研究内容の公開。初年度に行ったセッションをもとに、VTSの日本語教育への援用の可能性について、日本語教育の学会で口頭とポスターによる発表を行った。【研究の意義と重要性】 初年度はVTSの内容を調査・検討し、本当にVTSが日本語教育に応用できるかを考えた。日本語学習者の日本語のレベル、教育環境、日本語教師の能力など、様々な要因が影響されると思われるが、VTSは日本語教育でも十分用いることができ、言語の習得、教室運営、批判的思考や論理的思考の発達などの面を考慮しつつ、新しい日本語教育の方法として提案できると考えている。今後、さらに日本語教育に合った方法論を検討し、そのやり方や期待できる結果などをまとめ、インターネットや論文で、また可能なら書籍の形で広く公開していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は、初年度はVTSの理論と方法論を理解し、日本語教育に用いることができるかを考察するものだった。そのために、複数の美術館やVTSを実践している学芸員に取材を行ったり、VTSの仕方を教えるセミナーに参加したり、文献を読んだりし、また本研究参加者が何度もミーティングを行って内容の理解を共有し討論したので、当初の目的は達成したと考えている。また、VTSの日本語教育への援用の可能性を探るために、数回に分けて実際に日本語学習者を対象にVTSのセッションを行い、その内容を考察した。そして、その結果を学会で発表しており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は以下の内容を検討する。 1.日本語学習を念頭に置いたVTSの効果性の検証。なぜVTSが日本語教育に有効なのかを考えるため、VTSを用いたセッションと用いないセッションを行う。その内容を比較・分析し、VTS固有の特徴を挙げ、VTSのどのような要素が日本語教育に効果的なのかを考える。例えば、発話の内容や長さ、クラスの雰囲気、教師の役割などを考察する。 2.日本語習得のためのVTSの具体的な内容の検討。同じ日本語学習者を対象に連続してVTSのセッションを行い、学習者の発話にどのような変化があるのかを調査する。VTSセッションをすることで、学習者の日本語が教師側の期待するような形で上達していくのか、あるいは上達するための援助(例えば、動機付けといった感情面など)となっているのか、などを検討する。 3.研究内容の公開。 研究内容をもとに、日本語教育にあわせた新しい「日本語教育用VTS(Visual Thinking Strategies for Japanese Language Education)」を提案する。インターネットや学会などでその内容を発表し、VTSの理解を広めていく。また限られた研究者だけでなく、より多くの日本語教師にもVTSを実践してもらい、その内容の妥当性や効果などについて情報を共有していきたい。そのために、インターネットや可能であれば書籍などの媒体を使って、多くの人との情報の共有を図っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.VTSセッションのデータ収集。データ収集のための機材、研究協力費、文字おこしのための経費、VTSで使用する作品(ポスターや写真)購入、美術館への入館料など。2.成果発表。学会発表のための旅費、インターネットサイトの開設や印刷(報告書など紙媒体)の経費など。3.VTSの追加調査。必要であれば、VTSの創始者や実践者、実践している美術館や学校への取材。平成23年度からの繰越金(6846円)は、今年度のデータ収集のため(文字おこしのための経費)の一部に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)