2011 Fiscal Year Research-status Report
拍長のゆれのパラメータ解析と日本語音声リズムの日本語らしさ評価システムの開発
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23652120
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
馬場 良二 熊本県立大学, 文学部, 教授 (30218672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貞廣 泰造 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (00280454)
大庭 理恵子 熊本県立大学, 文学部, 講師 (80618009)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本語音声 / 拍の長さ / 北風と太陽 / 日本語学習者 / 失語症者 / 熊本方言話者 / 言語治療 |
Research Abstract |
本研究では、IPAのハンドブックにも失語症治療の検査文にも広く使われている「北風と太陽」を日本語話者の健常者と構音障害者や発語失行者、そして、外国人の日本語学習者に音読してもらい、それを録音、拍の長さを測定し、データベースを作成、統計数理と力学系理論を駆使して解析、拍の長さのゆれのパラメータを洗い出し、観念的な等時性、一つ一つの拍の長さが同じだと知覚される仕組みをあきらかにする。 その仕組みの原理をもとに、拍長のゆれを尺度とした、学習者、構音障害者や発語失行者の日本語の発音に対する評価システムを構築する。 読み上げる文章はイソップ寓話の「北風と太陽」とする。「北風と太陽」は、失語症や構音障害などの言語治療の現場で検査文として使われており、いくつかのバリエーションがある。また、IPAのハンドブック版や比企(2010)が音素の出現が網羅的になるように修正した均衡バージョンもある。これらのうちどれがもっとも本研究に適しているか検討した。失語症者の音声もデータとすることから、言語治療用にもちいられているバージョンを採用した。 熊本方言話者10名、熊本方言話者でない日本語母語話者10名、中国語話者、韓国語話者、英語話者の日本語学習者、各5名の音声を録音した。音を切り出してその長さを計測、記録している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
音声データから音を切り出して計測する方法を記述し、その方法論を構築、マニュアルを作成する予定であったが、音調計測の作業で手いっぱいとなってしまい、作業内容の反省と記録とができなかった。 拍の自動切り出し/計測ソフトを開発したかったが、予想以上にむずかしく、既存のソフトにどのようなものがあるかの検討に終わった。
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Strategy for Future Research Activity |
音声データを分析している間に、データ解析とシステム開発担当の研究分担者から音声に関する疑問が出された。担当はデータ解析とシステム開発であるが、音声に関する知識も重要で、平成24年度は、研究分担者が十分な知識が持てるよう研修の機会をもうける。そうすることによって、今後の研究全体の効率が上がり、かつ、研究の制度と質とが向上することが望まれる。 やはり拍の切れ目の特定がむずかしい。汎用大語彙連続音声認識エンジンであるJuliusが採用している拍の切り出しプログラム、あるいは、松浦(2009)が開発した音声セグメントシステムなど既存のプログラムを検証するだけでは不十分で、日本音響学会の協力を得て、研究チーム外からの情報を取得するよう努力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
録音、拍長の計測、音調と母音の無声化の分析をつづけ、音の切り出しマニュアルに改良をくわえる。被験者は、東京方言話者、熊本方言話者、各30名、中国語話者、韓国語話者、英語話者の日本語学習者、各10名、軽度の失語症者、構音障害者、発話失行者、各10名、計90名で、拍長の計測は手作業と自動切り出し/計測ソフトとの両方で行い、ソフトの開発と改良をすすめる。計測ソフトによって信頼できるデータが得られるようになったら、手作業の計測はやめ、その分の謝金を録音にまわし、拍長のデータ量をふやす。 東京方言話者の音声データから拍長のゆれの要因をHMMによって抽出、パターン化し、そのパターンを基準として熊本方言話者、各言語の日本語学習者、失語症者、構音障害者、発語失行者それぞれの音声データの拍長のゆれの逸脱を数値化する。この数値と東京方言話者が聴取した場合の違和感との関連を分析、自動評価システムのパラメータを抽出する。自動切り出し/計測ソフトの解析結果をSVM等の判別機にかけ、どの切り方が最も適切か評価をくわえる。 録音音声、拍(音)の長さ、音調、母音の無声化の分析結果をデータベースとし、試行版のソフトとあわせてHPで公開、広く情報を提供し、批判とアドバイスを受ける。
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Research Products
(1 results)