2011 Fiscal Year Research-status Report
問題発見解決能力の育成を目指した留学生のためのケース教材の開発
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23652125
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮崎 七湖 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授 (40579166)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ケースメソッド / 留学生 / 問題発見解決能力 / ケース教材 / 異文化間コミュニケーション / ディスカッション / 日本事情 |
Research Abstract |
本年度は、以下の手順で留学生のためのケース教材作成を行なった。まず、6名から成る、ケース教材作成グループを結成した。続いて、ケース教材の基礎的資料を収集するために、7月から2月までの間にグループメンバーで分担し、21名の留学生、ならびに、1名の元留学生に一人1時間程度の半構造化インタビューを行なった。調査対象者の内訳は、学部生6名、大学院生7名、日本語専修課程や交換留学生などの短期留学生8名である。このうち、男性が10名、女性が12名で、学部生、大学院生、元留学生については、文系、理系がそれぞれ7名であった。インタビューでは留学生活を振り返り、直面した問題や悩み、その経緯と解決策を語ってもらった。 次に、文字化したインタビューから156のエピソードを抽出し、「研究室」「サークル」「アルバイト先」等の場面、ならびに、「人間関係」「日本語能力の不足」「規則・規範」等の問題の種類による分類を行なった。次に、9月から3月までの間、10回にわたり、ケース教材検討会を開催した。この検討会では、抽出したエピソードから作成したケース教材をグループメンバーで検討し、コメントを言い合い、教材の改善を図るものである。このようにして、3月末までに18のケース教材を完成させた。 以上のケース教材の作成に加え、ケース教材を用いた日本語授業実践の教育的効果、ならびに、問題点を質的に探るための研究にも着手した。具体的には代表者が担当する、ケース教材を用いた日本語授業実践において、当該科目履修者に、質問紙、インタビュー調査を行い、学習者にどのような学びがあり、それをどのように捉えているかを調査、分析した。 今後は、ケース教材の作成を継続して行い、まとまったケース教材集として公開する。さらに、ケース教材を用いた授業での活動における、学習者のやりとりと学びを質的に調査、分析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教材作成のためのインタビューでは、予定通り多様な属性の留学生より様々なエピソードを聞くことができた。しかし、教材作成と検討については、当初の計画よりも、時間がかかり、目標数に達していないため、24年度の前期も継続して行なう。 この遅れは、ケース教材改善のための検討を繰り返し行ったため、予定よりも時間がかかったことに起因する。しかし、この検討を通して、メンバーにどのようなエピソードをどのように教材化するのかという基準ができつつあるため、今後のケース教材、および、検討については、より迅速に進めていけると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、インタビューより抽出されたエピソードから、継続してケース教材の作成を行なう。さらに、作成したケース教材を用いた日本語授業を実践し、アンケート、インタビュー調査による学習者の振り返りや評価、ならびに、クラス活動の録音とその文字化資料の質的な分析を行なう。この調査によって、ケース教材を用いた日本語教育活動の有効性を検証するとともに、作成したケースの見直し、および、授業活動の改善を図る。 また、これまでのケース教材集開発のプロセス、ケース教材、ケース教材を用いた授業実践を広く知ってもらい、様々な教育機関、研修の場等で活用してもらえるように、学会発表、論文発表、教員向けワークショップ等を行なっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は主に、ケース教材を用いた授業実践の調査とケース教材とその実践の方法を広めるための活動を行なう。具体的にはクラス活動におけるやりとり、および、学習者へのアンケート、インタビュー調査を進める。これを進めるにあたり、クラス活動とインタビューの録音を文字化するための経費が多く発生する。 また、ケース教材とそれを使った教育実践の方法を広めるために、ケース教材作成グループメンバーによる学会発表、ワークショップの開催等を予定している。このための旅費も研究費使用計画の多くを占めている。
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