2011 Fiscal Year Research-status Report
医療ツーリズムにおける通訳の役割及び非言語スキルの特定
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23652148
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
宮本 節子 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (80386896)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 異文化コミュニケーション / 医療通訳 / タイ王国 |
Research Abstract |
本研究は、医療ツーリズムの分野で先進地域であるタイ王国の国際病院において、医療通訳者が果たしている言語面/非言語面での役割と、その役割行使をめぐる課題を特定することを目的としている。平成23年度は通訳者役割論に関する文献研究に加え、タイの通訳養成機関及び医療機関の調査を実施し、医療に従事する調査協力者とのネットワーク構築を主な仕事とし、一定の成果をおさめた。養成機関としてはThai Association of Conference Interpreters(タイ会議通訳者協会)、チュラローンコーン大学大学院の英-タイ語通訳専修科において、医療分野における通訳のニーズ及びタイにおける通訳者養成カリキュラムについて情報を得た。また、医療機関においては、バンコク市内の総合/専門病院を10施設視察し、外国人患者に対する多言語サービス体制を調査した。これらの調査から以下のようなことが明らかになった:(1)タイにおける医療ツーリスト受け入れスキームは公的機関の指針によるものはなく、各病院のマネージメント部門が独自の体制を構築していること。(2)同様に、外国からの患者受け入れに対する多言語サービス体制並びに医療通訳者の資格基準・業務内容ともに病院の規模と重点分野によって異なる。(3)しかしながら、チュラローンコーン大学による国際病院スタッフ向けに特化した不定期コース開設など、医療通訳者の養成・人材開発に関する産学連携の試みも2011年に始まっている。平成24年度は、引き続き現役の医療通訳者に対する産学連携の教育内容について調査すると同時に、医療機関を限定して医療通訳者、また協働者である医師、看護師を対象に聞き取り調査を実施し、求められる医療通訳者の専門技能と現場での役割認識について分析し、結果を発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2度の海外実地調査によって、タイの国際病院における多言語サービスの現状把握並びに調査協力者のネットワーク作りは大きく進展した。しかし今年度のうちに成果の発表に至らなかったのは残念である。これには以下のような要因が挙げられる。(1)タイでの第2回実地調査は、2011年10月~12月の期間、バンコク都心部まで迫った洪水被害が主要調査対象機関に及び、2012年3月まで調査を大幅に延期せざるを得なかった。(2)上記(1)に相当する、海外調査が当初の計画通り進まない場合の対応策として、状況改善までの待機期間中に日本国内での医療ツーリズム先進病院の実地調査を行うという予定も本年度は断念せざるを得なかった。これは東日本大震災と原発事故の影響によりインバウンド観光客数が激減したことによる。(3)ある程度予想できたことではあったが、タイでの聞き取り調査依頼に際し、協力に消極的な医療機関が多かった。今後は、法人側に配慮したより明解な研究倫理の明記と周到な調査計画を作成する必要が有ろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度においては未使用の研究費が生じている。主たる理由としては以下の2点がある。(1)謝礼費:正式な調査協力機関および協力者に対する謝礼費が今年度においては殆ど使用されなかった。医療機関に対しては謝礼費が生ずる調査の前段階の交渉が多く、また大学研究者など謝礼費の生じない識者・協力者への取材が多かったためである。(2)旅費:日本国内の医療機関調査のための旅費が今年度においては使用されなかった。この原因は上記「現在までの達成度」の理由(2)で記したとおりである。また学会参加旅費も未使用であった。未使用の研究費は平成24年度に繰り越し、平成23年度に予定していた使途と同じく謝礼費及び旅費(国内調査及び学会参加)として使用する。今後の研究の推進方策としては、上記「現在までの達成度」の理由(2)で記したとおり、医療ツーリスト受け入れ病院の日本国内調査については状況を注視し、現状が長引く場合には、調査対象機関を拡大し可能な限り研究趣旨に近い成果を得られるように努める。タイ王国での調査については、チュラローンコーン大学通訳科及びバンコク国際病院通訳部とのコンタクトを維持し、早急に後者での聞き取り調査を実施する。また、タイ人医師及び医療ツーリズム経験者にも多言語医療サービス並びに医療通訳者の役割認識に関して質的調査を実施する。分析結果は、平成24年度後半に学会において発表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用計画の主な内訳は以下の通りである。(3)の謝金は聞き取り調査協力者への謝礼及びインタビュー音声の文字起こし費用である。(1)国内旅費(学会2回+国内医療機関調査1回):計15万(2)外国旅費(タイ王国調査2回):計35万(3)人件費・謝金:計15万(4)その他印刷費:5万
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