2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652158
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今津 勝紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (20269971)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 家族 / シミュレーション / 婚姻 / ライフサイクル |
Research Abstract |
本研究では、これまでの研究でえられた古代の出生時平均余命のデータや推定出産率などのデータをもとに、シミュレーションの手法を利用して人口動態を再現し、当時の婚姻や出産の在り方、さらには古代「家族」の姿を復原する。これにより、古代史研究の基本問題でありながら、暗礁に乗り上げたままの古代籍帳研究・家族史研究の新展開をはかることを目的とする。本年度は、大宝二年御野国戸籍のデータベースの整備を行った。各人に一意のIDを付与し、記載情報を確認した。また西海道戸籍についても同様の作業を行った。シミュレーションプログラムは、プロトタイプを改変し、計算速度の向上をはかった。もっともまとまりのあるデータである半布里戸籍のデータを基礎に男女総計の人工曲線を最小二乗法で作成し、人工曲線にもとづき、年齢別死亡確率を算出した。同じく半布里戸籍のデータを基礎に、女性の年齢別出産確率を算出した。その際、女性の一次データは歪みが大きいので、男性のデータ水準同様に、補正したものも試みたが、それがどれだけの有効性を持つのかはさらなる検証が必要であり、この点は次年度以降に検討する。計算過程で排出する死亡者データ、婚姻データ、出産データを一括で処理できるようにプログラムの修正を行った。こうして、婚姻の具体像をシミュレーションすることにより、婚姻構造の男女対称性の揺らぎが、婚姻を通じた血縁関係の連鎖にどのように作用するのかが明らかになるはずであり、この点を今後明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核心はシミュレーションプログラムの開発であり、その基本はできあがっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年に引き続き、人口の時系列変化を観察するプログラムを作成し、シミュレーションの中間に生成される死亡データ・婚姻データ・出生データを採取して、それを集計する。個人のライフサイクルを復元し、婚姻を通じた連鎖の具体的な在り方を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人口変動と集落動態の相関を調べるため、集落遺跡の確認調査などを行う。朝鮮半島や中国大陸での古代家族の在り方と比較検討するために、関連資料の収集と検討を行う。可能であれば、European Social Science History Conference 2012などに参加し、社会史研究としての比較の視座を得たいと考えている。
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