2012 Fiscal Year Research-status Report
弘前藩における「音」文化の成立及び「楽」思想の形成と近代への展開
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23652159
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Research Institution | Aomori Chuo Junior College |
Principal Investigator |
北原 かな子 青森中央短期大学, その他部局等, 教授 (80405943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浪川 健治 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50312781)
武内 恵美子 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30400518)
山下 須美礼 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (90523267)
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Keywords | 邦楽 / 洋楽 / 音楽 / 弘前藩 / 楽思想 / 地域研究 / 地方文化 |
Research Abstract |
本研究は、津軽地方弘前藩における「音」文化の成立や「楽」思想の形成過程を明らかにし、近代以降の日本文化への影響を考察しようとするものである。本年度は前年の研究を踏まえ、①資料選定収集及び解読作業、②分析視点及び枠組みの検討につき、研究を進めた。 ①資料収集および解読:弘前市立弘前図書館調査を継続、および東京芸術大学図書館所蔵の邦楽関係資料調査を行った。弘前市立弘前図書館については、主として近世期資料を中心に調査を行った。蔵書目録のうち、主として「八木橋文庫目録」、および「岩見文庫郷土資料総目録」を対象として悉皆調査を行い、関連資料を収集した。本年度は特に、藩校での教育内容(雅楽)に関わる興味深い資料、および楽譜を見いだすことができた。また、本研究テーマに関係すると思われるキーワードを元に、前年に収集した天保期の弘前藩庁日記の解読を進め、内容分析を行った。近代部分については、東京芸術大学附属図書館所蔵の邦楽調査掛関係の資料調査を行った。明治40年の設置から大正初期にかけた同調査掛の活動記録により、全体像の把握に努めるとともに、特に弘前藩士族だった館山漸之進が関わった平曲関係の資料を収集することで、当時の社会・文化状況における、館山漸之進および楠美恩三郎など弘前藩士族が果たした役割を考察する手がかりを得たと考えている。詳細は論考として発表予定である。 ②分析視点および枠組み検討:上記資料調査・収集と同時並行で、研究の分析視点や意義について、参加研究者間で随時ディスカッションを行った。現状の収集資料から音楽文化にかかわる士族層の動きが明らかになっている。これに民衆の動きも合わせてみていくことで、近世ー近代への移行期における個々の音楽ジャンルの在り方、その背景となる社会基盤への視点について、いくつかのポイントを考察した。これについても、詳細は論考として発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近世に関しては、前年に収集した弘前藩関係の資料の解読を進めた。これにより、同藩での「楽」の展開を明らかにしつつある。また本年度の収集した弘前藩学校関係資料の中に楽譜が含まれることは、この分野の研究を展開する上で重要と考えている。 近代については、前年の宣教師文書の収集で明らかにした洋楽の状況に加え、本年度行った邦楽調査掛の調査により、特に洋楽と邦楽の双方の中で動いた弘前藩士族の動向が明らかになってきている。館山漸之進が残した文書を検討することは、現在の課題となっているが、全体としてはおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、弘前藩庁日記調査を含めたすべての資料調査を完成させることを目標とする。資料調査から明らかになったことを踏まえ、最終的に、本研究の目的として掲げた各項目について、考察をまとめていきたい。具体的には、①藩校を中心とした士族層の「楽」の展開について、②弘前藩領内の民衆の動きと「音」の世界、③近代の音楽文化における弘前藩士族の果たした役割 などを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に旅費および収集資料解読費として使用する予定である。弘前市立弘前図書館、東北大学附属図書館、などの資料調査に加え、本年度は、本研究の今後の展開を考察するためにも、研究に参加している分担者全員による研究討議の機会をふやしたいと考えている。
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