2011 Fiscal Year Research-status Report
威信言語から共通言語へ――アジア史における言語接触と地域アイデンティティー
Project/Area Number |
23652164
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
緒形 康 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (40194427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 裕之 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70303899)
伊藤 隆郎 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (60464260)
村井 恭子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50569291)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 威信言語 / 言語接触 / 地域アイデンティティー / アジア史 / 中国 / インド / イギリス / オランダ |
Research Abstract |
「威信言語」とは、政治権力の強制によることなく地域文化圏の形成を可能にするアウラを有した言語だが、「共通言語」は、地域の行政から日常を覆う政治文化の構成体であり、現代の公用語を典型とする。 本研究は、16~19世紀のアジア史を「威信言語」と「共通言語」の概念に基づいて再構成し、帝国から国民国家へ、あるいは中華・イスラーム文化圏から世界システムへという従来の通史の枠組を乗り越え、地域の文化的アイデンティティーに即した多文化共同体としてアジア史を記述する手掛かりを見出すことを目的とする。 具体的には、16~19世紀のアジア史における地域アイデンティティーは、漢語・アラビア語が威信言語の性格を温存したまま、書記体系を離れた記号学的な共通言語へと内部再編された文化圏と、マレー語・ペルシャ語などの威信言語が植民地化の危機の中で消滅し、インドネシア語、インド土着言語、英語等の新たな共通言語が誕生した文化圏の2つに類型化されるという理論仮説を基に、その検証作業を進めてゆく。 平成23年度は、これらの言語が学術的記述や政策的操作の対象になり、かつ当該時代の地域文化アイデンティティーの形成と深く関わっているとの見通しに基づいて、欧米諸国の出先研究機関、教育機関、キリスト教ミッション団体など、および現地知識人・文学者・言語学者の研究機関や言語協会(アカデミア)、教育機関、文書館などの実態の解明に資する基礎資料の収集に努めた。 その成果は、『アジア威信言語関係研究文献目録(初稿)』として刊行する予定である(2012年5月刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、アジア史における威信言語と共通言語が、学術的記述や政策的操作の対象になり、かつ当該時代の地域文化アイデンティティーの形成と深く関わっているとの見通しに基づいて、欧米諸国の出先研究機関、教育機関、キリスト教ミッション団体など、および現地知識人・文学者・言語学者の研究機関や言語協会(アカデミア)、教育機関、文書館などの実態の解明に資する基礎資料の収集に努めた。 その成果を、『アジア威信言語関係研究文献目録(初稿)』として刊行予定(2012年5月刊行予定)の文献目録集にまとめることができたことは、研究の大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
威信言語から共通言語への歴史的展開を担い用いた当事者たちの、当の言語や周辺の諸言語に対する態度の変遷を、文芸理論書・翻訳書・文法書・語彙集といった古典籍を通じて解明する。これらの大半は未公刊ないし稀覯に属する文献であり、手写本や刊本を探索・調査する必要がある。 この際、中国人民大学[担当:緒形、村井]、オクスフォード大学[担当:真下]、ライデン大学[担当:伊藤]はそれぞれ漢語・中国語、ペルシア語、アラビア語の古典籍研究の揺籃期・確立期を担った研究機関であり、その蔵書に対する調査が、今後の研究の主要な推進方策となる。 また、資料の閲覧・収集・分類に関して、上記3機関の専門家の助言を得ながら行う。これらの作業によって3機関との人的ネットワークを強化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国人民大学で主に漢語・中国語文献[担当:村井]、オクスフォード大学でアラビア語文献[担当:伊藤]、ライデン大学でマレー語文献[担当:緒形、真下]をそれぞれ探索・調査する。 また、3機関に所属する海外共同研究者と面談して、課題となる問題群を整理し、国際ワークショップの開催準備を進める。 これらにより得られた知見を共有し、研究成果をブラッシュアップするために、国内で会議を開催する。 そして、本研究によって得られた諸成果をまとめて中国語と英語で報告書を作成する。
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Research Products
(5 results)