2012 Fiscal Year Annual Research Report
威信言語から共通言語へ――アジア史における言語接触と地域アイデンティティー
Project/Area Number |
23652164
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
緒形 康 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (40194427)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 裕之 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (70303899)
伊藤 隆郎 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60464260)
村井 恭子 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (50569291)
|
Keywords | 威信言語 / 共通言語 / アジア史 / 地域アイデンティティー / マレー語 / ペルシャ語 / 漢語 |
Research Abstract |
本研究は、16~19世紀のアジア史を「威信言語」と「共通言語」の概念に基づいて再構成し、帝国から国民国家へ、あるいは中華・イスラーム文化圏から世界システムへという従来の通史の枠組を乗り越え、地域の文化的アイデンティティーに即した多文化共同体としてアジア史を記述する手掛かりを見出すことを目的とした。 16~19世紀のアジア史における地域アイデンティティーは、漢語・アラビア語が威信言語の性格を温存したまま、書記体系を離れた記号学的な共通言語へと内部再編された文化圏と、マレー語・ペルシャ語などの威信言語が植民地化の危機の中で消滅し、インドネシア語、インド土着言語、英語等の新たな共通言語が誕生した文化圏の2つに類型化されるという理論仮説を基に、その検証作業を進めた。 具体的には、オクスフォード大学東洋学部、ライデン大学地域研究所などとの学術交流を基に、資料の閲覧・収集・分類を、これらの機関の専門家の助言を得ながら行った。その成果として、『アジア威信言語関係研究文献目録(初稿)』(2012年)を公刊した。 最終年度の研究成果としては、17世紀以来の漢語・マンジュ語に関する研究論文を発表すると共に、16世紀のムガール帝国におけるペルシャ語文献に関する注釈の刊行を始めた。また、本研究のメンバー4名によるマレー語研究に着手した。 チベット語など同時期の他の言語に関する研究者との意見交換を通じて、当該研究の理論仮説を相対化する努力を行うなど、研究期間内において、16~19世紀の威信言語と共通言語に関する実証研究の端緒を築くことができた。
|
Research Products
(7 results)